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接触2
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「お久しぶりです、八嶋さん」
落ち着いた綺麗な声が響く。
ああ、亮だ。当たり前のことなのに、目の前にいるのが想い焦がれる亮であることに、安心感を覚える。
出会った頃とちっとも変わらない、繊細で綺麗な顔。あの頃よりも健康的になったけど、儚げな雰囲気は変わらない。守ってやりたい、抱き寄せたい、そんな気持ちにさせられる。
「相変わらず綺麗だな、亮」
こんなクサイ台詞も言い慣れてしまうほど、亮とは何度も飲みに行っている。見込みがないとわかっていても、どうしても会いたい気持ちが募るのだ。そして、決して振り向かないとわかっていながら、口では亮を口説いてしまうのも、また止められなかった。
「相変わらず、ですね。八嶋さんも」
苦笑いで答えてくれる亮は、こんなおれの弱さを理解してくれているように思う。そうでなければ、もうとっくに縁を切られているだろう。
飲み友達としてでもいいから繋がっていたい。亮と恋人になれなくても、亮と会えなくなることだけは辛かった。
この亮への思いが最早、“恋”と呼べるものではないのだろう。執着心、未練、色々と表現できるのだろうが、おれはまだこの気持ちを“恋”だと思っていたかった。
結局は、そうやって逃げていただけだ。亮の誠実さに甘えていた、それだけだった───
「そういや、この前、亮の上司?でいいのか?あの、朝比奈教授って人に会ったぞ」
「先生からも聞きました、なんか失礼なこと言ったらしいですね。あの人、酒が入るとホントに大変なんです」
すみません、と頭を下げる亮を見て、ぼんやりと感じる。
ああ、おれよりもあの人の方が亮に近いのだ、と。まるで身内の失態を詫びるように自然に謝る姿は、上司のことを詫びる姿ではなかった。
おれよりも親しさを感じさせる口調に、胸の奥の醜い嫉妬を呼び覚まされながらも、それでも亮と共に過ごす時間が欲しいと願うおれは、さぞかし滑稽なことだろう。
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