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再会2
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田中が素直なおれの様子に、口角を上げて笑う。
「さすがに料理人目指す奴なら、この美味さには大人しくなるな」
「・・・なんでおれの夢知ってるんだ」
素の自分を出してしまった恥ずかしさから、更に目付きを悪くして田中を睨む。
「俺の仕事だからな、情報収集は」
事も無げに田中が言う。ヤクザなら当たり前ってか。この男のたちの悪いところは、ヤクザが悪だと割り切って動くところだろう。善良な一般人でも巻き込むことを悪びれない。
「今回のは、俺の単なる興味だよ。ヤクザ相手だとわかってながら、電話越しとはいえ喧嘩うってきて、それでもお人好しにもぼろ雑巾も見捨てない男が、どんな奴か知りたくなってな」
ぼろ雑巾というのが純のことだと言うのはすぐにわかった。一瞬、ムカッとするが、おれが純を好きだと言うことが弱味になるのかもしれないと、ぐっと堪えて、苦いものを流し込むようにビールを喉に流し入れた。
「別にヤクザなんか怖くはねーよ。あえて関わりたいとも思わねーけどな」
ヤクザが怖いと思ったことがないのは、これもオヤジの影響だろう。オヤジは仕事柄アンダーグラウンドな取材も多く、柄の悪い連中との付き合いもある。そんな中で育てば、本当に怖いのは見た目や職業とかではないと感じるようになるのは当然だろう。
今日田中に会うのも、別にコイツがヤクザだから嫌だとは思わなかった。なんとなく気に食わない奴だから嫌だっただけだ。
それでもここに来たのは、もしかしたら純のことを何か知ることができるかもしれないと思ったからだ。
「お前、アイツに惚れてるんだろ?」
突然、あっさりと言い当てられて、口に含んだビールを吐き出しそうになった。
「・・・やっぱりな」
淡々とした口調からは、何も読み取れない。
どういうつもりでこの話を切り出してきたのかわからず、このタイミングで否定もできず、ただ黙って田中の次の一手を待っていた。
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