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接吻
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後ろでカチャカチャ留め具をつけながら恭一が耳元でおれを呼ぶ。
約十年間、隣で毎日呼ばれてきた名前。
恭一の顔だって、下手すりゃ鏡で自分の姿を見るよりも見てきた。
ダチ…なんて言葉もしっくりしない。幼馴染みだけどその言葉以上に近しい間柄で。
家族とも違う。
恭一はおれの中でそんなあやふやな存在。
けれど圧倒的な存在。
あやふやで圧倒的なんてあべこべすぎて可笑しな表現なのかもしれない。
だけどコイツがいなければ今のおれはいないんじゃないかって思えるくらい、恭一はおれの人生に大いに関わっていた。
いつも、当たり前のように隣にいたからその存在に名前なんてつけようがなかった――――
「んー?」
恭一に名前を呼ばれて何気なく返事した。
「練習してやろうか?」
「何の?」
「キスの」
はっ?何言ってんの、コイツ?
一瞬面喰らって恭一の顔をぽかんと見上げると思いの外真面目な双眸とかち合った。
無言になったおれの反応を了承と受け取ったのか指で顎をクイッと上げられた。
「唇…少し開けて」
恭一の声が少し掠れている。
そこでされるがままのおれもハッとした。
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