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雷鳴
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バチャン
水溜まりをモロに踏んでスニーカーが中までびっしょり濡れていた。
だけど止まるわけにはいかない。
後ろからぴったり恭一が追いかけてくるのが足音でわかるから。
足の長さにリーチがあるからこのままじゃ捕まるのは時間の問題だ。
事実、足音がだいぶ近くで聞こえてくるのでかなり距離を詰められているんだと思う。
恭一のやつ…
何で佐藤さん放っておれを追いかけてんだよ!?
「ヒロ待てよ!何で逃げるんだよ!?」
「お前こそ…ッッ…何でついてくるんだよ!?」
「お前が逃げるからだろ!止まれ!!」
厚い雲は太陽の光を遮り、夕方にも関わらず辺りは真夜中かと思うほど真っ暗でこの大雨のせいで通行人もいない。
二人分の走る靴音、
雨が地面を叩く音、
そしておれたちの声しか聞こえない。
周りに人の気配がないので、まるで世界におれたち二人しかいないのかと錯覚してしまうくらいだ。
時々光り絶えず雨粒を落とす空はゴロゴロと腹に響くような低音で唸っている。
あまりの不気味さに走っていても背中がぞくりとするほどだった。
「キョーが追いかけてくるから止まれねーよ!!…ハッ…ついてくんな……ハッ……佐藤さんのとこに…戻れよ!」
息が乱れて肺が苦しかったが絞り出すようにそう叫ぶとチィッ、と恭一の舌打ちがすぐ後ろで聞こえた。
えっ?
と思った時にはもう遅かった。
急に腕を掴まれて前のめりに転びそうになったところをグイッと後方にひっぱられた。
い゙だっっ 肩が抜ける!!
抵抗する間もなくそのまま恭一の胸の中に飛び込むような形になってしまった。
「ハァ……離せよ。ハァ……ンで追いかけてくんだよ…」
酸素を取り込むのに心臓が忙しなく活動して息苦しい。
恭一は逃がすまいとギュッと両腕でおれの身体を掴まえている。
ちょっ…端から見たら男同士で抱き合ってるように見えちゃうから!!
おれの黒歴史増やすなよ!!
腕の中で暴れれば暴れるほど恭一の腕の力が強くなる。
いよいよ骨が軋む音がして、もがくのを諦めた。
…痛いし。
おれが大人しくなると恭一はハァ…と深く息を吐いた。
「お前なんか勘違いしてるだろ?」
くそぅ…おれだけ息が上がってる。
恭一、あんだけ走ったのに平然としてるし。おれ、情けな…
恭一が少し身体を離しておれの顔を覗きこんできたのでフイと顔を横に背けた。
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