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嫌な予感
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途方に暮れて頭を抱えた。
ない知恵を絞ったってしょうがないと早々に手を上げた。
元々おれは頭がいいわけでもないし勘が働くわけでもない。
有る程度の目星がついているのなら恭一に聞く方が手っ取り早い。
さっきみたいに『どうでもいい』って片づけられそうだけど。
考え事をしていたせいか、おれの視野はかなり狭くなっていた。
それだけ集中していた自分にある意味感心したいくらいだが、同時に自分の暢気さに腹立たしく感じた。
廊下の様子が、いつもと違うことに全く気付いていなかったのだから。
自分のクラスの扉の前で人垣ができているのにようやく気付いたのは教室から目と鼻の先の距離で。
その人垣はほとんどが他クラスの面々だった。
もう授業が始まる時間だというのに扉の前で塊を作って教室内を窺っている。
どうしたのだろう?
「……教室入りてーんだけど何かあんの?」
人垣の中に隣のクラスの見知った顔を見つけたので訊いてみると、やや早い口調で返事が返ってきた。
「や、いま修羅場ってるから入らない方がいいぞ」
「え、でも授業……」
そいつは教室内のやりとりをちらちらと横目で気にしながら声を掛けてきたのがおれだと分かると、今度は少し丁寧に教えてくれた。
「高橋は直接は知らないと思うけどさ、ずっと欠席してる小林大輝っているじゃん?」
ドクン、
他人の口から聞いた小林大輝〈おれ〉の名前に心臓が大きく鳴った。
思わぬ言葉に動揺する。
おれが何なんだ?
「あいつさー実は事故にあってずっと意識不明で入院してるんだと」
話を聞きながら、視線を移すと人垣の隙間から扉の小窓が見えた。
室内の様子は一目で険悪なものだと分かる。
教室の後ろの隅で何人かの女子が輪を作り一点を睨んでいるのが見えた。
他の生徒も同じ方向を睨みつけている。
嫌な予感がした。
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