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彼女
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その後、恭一は教室に先に戻り、少ししておれも保険医に元気そうだからと保健室を追い出され廊下を歩きながら考えていた。
…………確実に黒歴史を増やしている気がする。
もう、アレか。
歴史増えすぎて伝説になるんじゃないか………
「………あり得ねーっつーの」
「何があり得ないの?」
教室の扉の前でぼやいていると思いがけず返事が返ってきた。
驚きつつ横を見れば佐藤さんが立っていて更におれを驚かせた。
目が合うと彼女はにっこりと笑んだのでドキリと心臓が跳ねた。
「さ…佐藤さん……」
おれの言葉に一瞬驚いた顔をして、すぐに彼女はふわりと笑った。
「嬉しいな。もう名前覚えてくれたんだ。体調は大丈夫?」
「あ、ああ……」
「転校して環境も変わったから色々疲れがたまってるのかもね。お大事にね」
ぽんと肩を叩かれる。
ああ…そうだ。
おれは彼女のこういうところが好きだったんだよな。
優しくて、気配りがあって、控えめな彼女に。
だけど今も同じ気持ちでいるかと訊かれたらそうは思わない。
だって彼女は恭一が好きだから。恭一だって彼女を………。
だから、今はもうアルバムを捲るみたいに「ああ、なつかしいな…」と思うだけ。
なんとなくその笑顔をじっと眺めていたら後ろから肩をドンと押された。
「邪魔」
教室に帰った筈の恭一がなぜか廊下側にいておれと佐藤さんをジロリと見た。
心なしか佐藤さんへの視線が睨んでいるように見えたのは気のせいだろうか。
「ご、ごめんね…」
慌てたように道をあける佐藤さんの顔色は少し青白く、首を傾げた。
何と言うか…
違和感。
「……彼氏だろ?あの態度はひでぇな」
恭一が扉を閉めてから思ったことを口にすると佐藤さんは目をパチパチと瞬かせた。
「え?違うよ。鈴木君が彼氏なんて…他の女子に睨まれちゃう」
「え……そうなの?」
「そうだよ。それに、私は鈴木君って言うより……高橋君みたいな人の方がタイプかなっ」
最後の方は早口で捲し立て、目の下を赤らめながら彼女はそそくさと教室に入っていった。
残されたおれはぴしゃりと閉まった扉の前で呆然と立ちつくしていた。
えーと。
これって、どういうことなんだ?
喜んでいい……のか、よく分からない。
おれがタイプ?
いやいやいや喜べないだろ。
恋人同士かと思っていた恭一と佐藤さんは付き合っていない。
でもあの雨の日にキスしてたよな。
なんで?
なんで二人とも何もなかったようにしているんだよ。
なんでなんで、と疑問符が頭に浮かんでは消え、消えては浮かび。
次の授業は英単語の小テストだったけどおれの頭の中は混乱してテストそっちのけ。
色んなことがぐるぐる頭を巡ってパンクしそうだった。
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