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おれじゃない
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前回この病院を訪れてからすっかり足が遠のいていたが、今回の一件で無性に大輝に会いたくなった。もちろん元の身体に戻る方法なんか糸口すら見つかっていない。それでもおれがここに来たのはもう一つの理由があったからーーーーー。
あいつをーーーーー恭一を病室に連れていくこと。
あいつがいまだに病院を訪れていることには気づいていた。
相変わらず病室に入らず外から見上げるだけだということも。
もう『おれ』はここにいるんだからそんな必要はないのだと教えてあげたかった。
外見は違えどおれはここにいる。
それを知っている恭一に。
だからーーーーおれは少しも警戒していなかった。
お前はいつも真っ直ぐおれを見てくれていたから。
『大輝』を引き合わせることがどういうことか。
もっとよく考えれば良かったのだ。
こんな風にあの雷の日から、たくさん掛け違いをしてきたのだろうか。
お前とおれは。
「ヒロ……」
恭一の声に顔を上げる。が、すぐに恭一の視線の先が自分に向いていないことに気が付いた。
病室に入った恭一が真っ先に向かった先は大輝の横たわるベッドの傍だった。
「………ヒロ」
自分の名前が呼ばれているはずなのに恭一が切なげに繰り返し呼ぶのはおれではなかった。
おもむろに恭一が差し出した手の甲が大輝の頬を撫でた。
それだけなのにその光景を見た瞬間、胸がどくんと大きく鳴った。
それは『おれ』じゃないのにーーーー
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