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実行②
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あることに気づいた。
指先に何かが触れる。ガサガサしてるこの感触…。それが何かを確かめるために、そっとポケットから取り出した。
倉橋は目を丸くした。
(せ、千円札だっ!)
なんとポケットにはしわくちゃの千円が入っていた。一体なぜこんな所に。そう思ったが、一瞬考えを巡らせたら、思い当たるふしがあった。月はじめにお小遣いを貰った時、財布に入れるのが面倒でなんとなくポケットに入れたのだ。
倉橋は、あの時の自分のズボラさに感謝しながらしわくちゃの千円を指で撫でた。
(野口さん、ありがとう!!)
しわだらけの野口英世。それを愛しげに見たあと、コンドームの値段を確認する。
「えーと…980円…」
(ギリギリ足りる。良かった、これで万引きしなくてすむっ!)
倉橋は心の中でガッツポーズをした。
レジにそのまま向かおうと思ったけれど、ふとお菓子コーナーに目がとまった。
(佐木くん、うまい棒とか好きかな)
1個10円のうまい棒。勝手に持っていったら、余計なことするなって言われるかもしれない。けれどちょっと考えたあと、やっぱり買うことに決めた。
残りの20円で二つ買う。
自分のものと、佐木のもの。別にゴキゲン取りのために買うわけじゃない。素直に佐木の喜ぶ顔が見てみたいと思った。
うまい棒だけでそこまで喜ぶとは思えないけど、一人一個ずつ、あのベンチで一緒に食べれたら。頭の中でそんな平和な妄想が膨らみ、思わず顔がにやける。
(どの味が好きかな。)
コンドーム片手にうまい棒の種類を選ぶ中学生。なんとも異様である。周りの客もちょっと気になるようでチラチラと視線を送る。
しかし。先程の緊張感はどこへ行ったのか。浮かれている倉橋にとって他人の視線などどうでもいいことであった。
佐木のうまい棒の好みの味を考える。今はそれだけで頭がいっぱいだ。
甘いのが好きか辛いのが好きか。
さんざん悩んだ末、明太子とコーンポタージュにした。辛いのが好きでも甘いのが好きでも、佐木の好みに合わせられる。
ワクワクしながらレジに並び会計を済ませた。
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