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感情④
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「やっぱそうだ、否定しないんだ」
少しは落ち着いたと思ったが、佐木の瞳がまた潤み始めた。
すねた子供のように唇をとがらせる仕草が倉橋の心臓をゆさぶる。
「同情じゃ、ない」
そう答えると、じゃあ何なの、とさらに言葉を促した。
なんと答えれば正解なのだろう。本音を言ってしまえばこの恋心がバレて、きっと気持ち悪がられる。
だからといって下手な嘘をついても、佐木がそれで納得するとは思えない。
「あ….憧れてて」
倉橋はうまい棒を握った自分の手と佐木の顔を交互に見ながら言った。
「佐木くんに、憧れてたから….仲良くなりたかった……一緒に食べたかった」
「….…何それ、…嘘じゃないの」
「ちがう」
「…でも俺、お前の事いじめてんじゃん」
「…うん。」
「キライにならないの」
「な、ならない」
「ふうん…お前、もしかして……」
(ーーーーしまった!き、気づかれた?!)
こんなにもナチュラルに好意を示すやりとりがあるだろうか。どんなにイジメられても嫌いにならないなんて、よっぽど好きじゃないとそんなこと思わない。淡々と質問に答えていたらつい本音が飛び出してしまった。
「…もしかして…何??」
苦笑いしながら聞き返す。
バレてしまったと心臓がバクバク鳴って、冷や汗が流れる。言葉の続きを聞きたくない。
次に佐木の口から言い放たれる言葉はきっと、この恋を無謀な恋だと、叶わない恋だと、そう思い知らせるものだろうから。
「もしかして…」
「ドMなの?」
「…‥…‥.ええ!?」
素っ頓狂な自分の声と、うまい棒が地面に落ちる音が聞こえた。
あわてて拾い上げて土を払う。
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