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感情⑤
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(ーーーーバレてなかった。)
佐木は案外鈍感なのかもしれない。安堵しつつも、変な勘違いをされてしまったなぁと頬をかく。
「ふーん。そうなんだ。倉橋って、ドMなんだぁ」
少し前までは、泣きべそを書いていたとは思えないほどのしたり顔の佐木。
鼻は若干赤いままだが、いつも通りの表情に安心した。
「まぁお前がMなら俺はSだからな。…これからもイジメてやる」
イジメてやる。
いじめられるのは嫌だけど、佐木のその言い方に、つい不純な妄想を掻き立てられてしまい恥ずかしくなる。
(なんでこんなにドキドキさせるんだろう。佐木くんには、振り回されてばっかりだ)
勝手に想像して勝手にドキドキして。本当に自分は馬鹿だと思う。
どうせ叶うはず無いという諦めと、ほんの少しの期待。
なんてバランスの悪い心なんだろう。どっちつかずの気持ちなんて、苦しいだけなのに。
そんな事を考えていると、どうしても佐木の気持ちが気になってしまう。無いなら無いでいい。それは仕方ない事だから。
ずっと聞きたかったこと。今なら聞ける気がした。
「あ、あのさ。こんな事、急に聞くの変かもしれないけど…」
「なんだよ」
「…さきくんは、僕の事、どう思ってる?」
「…は?」
「僕の事、嫌い?」
なんて言われるかは、分かってる。大体想像がつく。嫌いだからいじめてるんだって。
わかってるんだけど、それでも。自己解決して傷つくより、佐木の言葉で傷付きたい。
その方がキッパリ諦められる。こんな事思うなんて、ほんとにドMなのかもと少し可笑しかった。
佐木の目が倉橋の目を見つめる。
それを見返すことができなくて俯いてしまう。だから佐木の表情が全く読み取れない。
聞かなければ良かったかもと後悔しつつ、俯いて佐木の言葉を待った。
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