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正義感
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そう書いたものの、心のどこかで返信を待っている自分がいて、やっぱり、返事要らないなんて書くんじゃなかったかも、と少し後悔する。
返信がないと、読んでくれたのか、どうなのか、はっきりしないから。
メールを送ったあと携帯をしまい、いつも通り一人で弁当を食べる。
中学校に上がってから、クラスに馴染む間もなく佐木にいじめられ始めたからこうして一人で食べるのが当たり前だった。
それはそれで良いんだけど、仲のいい友達同士でワイワイ楽しそうに食べている周りの人を見ているとやっぱり羨ましく思う。
(みんな、楽しそうだな。でも僕だって、明日からはサキくんと…)
「倉橋くん」
箸を持ったまま考えていたら背後から声がした。僕に話しかけて来る人がいるなんて珍しい。いじめられている僕は周りから見れば厄介者でクラスの中で腫れ物のような存在だったから。
誰だろうと振り向いた。そこにはクラスの学級委員長、百城くんの姿があった。
百城という名前は、“ももき”と読むらしい。
初めて苗字を見たときは“ひゃくしろ”と言うのかと思っていたけど周りからモモとかモモくんとかアダ名をつけられていたので、そういう事だろう。
特別容姿が良いわけでは無いが、背が高くてスタイルがいいので結構目立つ。
クラスでもしっかりしていて明るくて男女問わず好かれている生徒だ。頭もよく学級委員に選ばれる理由もわかる。
そんな百城くんがなんの用だろう。僕は日直でもないし、とくに先生から頼まれごともしていない。もしかして居眠りしてた事を怒りに来たのかも。
構えている僕に彼は優しく声をかけた。
「倉橋くん、俺と一緒に食べない?」
「え?」
いいけど、どうして??そう答える。
不安げに見つめる僕に対して、
「いや、別に佐木みたいにいじめに来たわけじゃないから!安心して!」
と、慌てた様子で言う。
「ちょっと話したい事あってさ。ここじゃなんだから…屋上で食べよう?」
屋上鍵開いてるか分かんないけど、と言いながら自分の弁当を持って教室をでる百城。
見ているだけでついて来ない僕に、振り返ってこっちこっちと手招きする。
あまり乗り気では無かったけれど、断るのも悪い気がして食べかけの弁当を持って仕方なく百城の後ろについていった。
僕がちゃんとついて来るのを確認してから、また歩き出した。
後ろから遠目に見てもやはり背が高い。僕と並んだらきっと頭2つ、3つ分くらい違うだろう。
クラスで一番背が高いんじゃないかな。
因みに僕と佐木くんは同じくらいの背丈。
やや佐木の方が高いけれど、さほど違いはなく、だいたい目線は同じくらいだろう。
(百城くんは先生より背が高いもんなぁ)
その背中を見ながら着いて行っていると、百城は急に立ち止まり、振り返った。
「なんでそんな離れて歩くのさ」
もっと近くにおいでよ、さびしいじゃん!と冗談まじりに言い、歯並びの良い口を横に大きくあけ、僕にニカッと笑いかけた。
(…笑うと口も大きくなるんだぁ)
などと、どうでもいい事を考えながら僕は小走りで駆け寄った。
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