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悶々③
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ーーーーー
掃除も終わり残された授業もなんとか居眠りせずに終らせた。
放課後。
帰る支度をしながら、佐木の事を思い浮かべる。メールでは風邪だって言ってたけど。
やっぱり不安だ。
「ゆうきっ」
肩をポンと叩かれた。
この声はそう、
「モモくん…!」
視線の先にはニカッと笑うモモくんがいた。
「もう帰るの?」
「うん、部活も入ってないし」
僕がそう言うと残念そうに肩を落とした。
「そっかぁ。ホントは一緒に帰りたかったんだけど、学級委員の集まりあって呼び出されてるんだよね」
「委員長は大変だね、頑張ってね」
「うん、頑張る」
僕なんかと帰ったって、何も楽しいことなんてないし、それでいいんだよ。
本当はそう言いたかったけれど、悲しくなるから、やめた。すぐにマイナス思考になるのは悪い癖だ。
「どしたの。悲しい顔して」
そう言って僕の頭をぐしゃっと撫でた。
「あははボサボサんなった」
ニカッと笑いながらさらにわしゃわしゃする。
「わ、やめてよ!もう!」
その手をなんとかして制そうとするが、力の差は歴然。全く歯が立たない。
わしゃわしゃするのに飽きたのか、今度は髪の毛の感触を楽しむように、優しく撫で始めた。
大きな掌が触れるたび、体が小さく反応する。頭なんて撫でられ慣れてないから。
ゆっくり掌全体で包むように撫で続ける。髪の毛の流れに沿って優しく。暖かくてポーッとしてくるけれど、教室内にはまだ人がいて、二人っきりでは無いので少し恥ずかしい。
「あの、ぼく犬じゃないんだけど」
一向に手を止めないモモくんに、いじけるように小さく呟く。
「うん、知ってる」
僕のボサボサの髪を手櫛で整えながら優しく微笑む。
僕がゲイなの知ってて、こんな事するんだもんなぁ。
佐木君以外にときめく事はないと思ってたけど、こんな風にされるとやっぱり落ち着かない。
「も、帰るから」
一歩後ずさってそう言ったけれど、引くに引けない。なぜならもう一方の手で肩をがっしり掴まれているから。
「いい髪質だよね。女の子みたい」
「……男だけどね」
「サラサラー」
ゲイなのに、そんな事思うんだ。もしかしたらモモくんはバイとか言うやつなのかもしれない。
男の人も女の人も好きになれる人。モモくんは皆から好かれてるし、皆を好きになれるんだ。多分そうだ。
それに比べて僕はーーー
「おーい!モモー!委員会行こうぜー」
廊下から声がした。違うクラスの人だ。モモくんと同じ集まりに呼ばれていたのだろう。
その声に反応したモモくんは僕の頭から手を離すと、廊下にむけて今から行くよーと返した。
その後すぐに視線を僕に向け、行ってくるねと言って手を振った。
僕も小さく手を振り返す。
その背中が教室から出ていくのを確認してから僕も教室を後にした。
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