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ゆうやけ
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時計の針は夕方6時を回っており、ふと窓を見れば外は真っ赤に染まっていた。
「時間が経つの、はやいね」
僕がそう言うと一度窓の外へ目を向けた後、またすぐに視線を地球儀へ戻しクルクルし始める。
「帰れってこと?」
拗ねたように言う横顔はどこか辛そうで、まるで夜が来るのを恐れているみたいだった。
「そういう事じゃないけど…サキくんのお母さん、心配しないかな?」
その問いかけには、返事をしない。
不貞腐れた顔をしながら回り続ける地球儀を見つめている。
「もしかして、お家で何かあった?」
帰りたくない理由、もしくは帰れない理由があるのかもしれない。
本当は、もっと具体的な事を聞きたかった。学校の昼休みにかかってきたあの電話や、らしくないメールのこと。
かと言ってサキくんの心の中に土足で踏み入るようなことはしたくない。誰だって知られたくない事の一つや二つ、抱えているものだ。
「答えたくないなら、別にいいんだけど…」
そう付け足すと、ジロリと睨んできた。やんわりと言ったつもりが、どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。
地球儀を回す手は止まり眉間にはシワが刻まれている。そして心なしか若干ほっぺたが膨れ、いかにも不機嫌な表情へ早変わりしている。
気怠そうに起き上がり、地球儀を元の場所に戻した後、ベットの上にあぐらをかいた。
「お前の母ちゃん。ゆっくりしてけって、言ったよな」
「うん、言ったね」
普段より低めの声にコクンと頷くと、「だろ?」と満足げに目を細める。
「だからゆっくりしてんだけど」
何が悪いの?とでも言うような上から目線。根っからの餓鬼大将気質を感じる。
「それに、俺今日は泊まるから」
「え?」
「お前がトイレ行ってる間、美代子さんと話した」
「そう、なの??」
いつの間に名前で呼び合う仲になったんだ!と突っ込みたくなったけれど、あの人の事だ。なんとなく理由は分かる。
おそらく、名前で呼ばないなら泊めないとでも言ったんだろう。
しかしそれにしても、あんな短時間で…。
僕だってサキくんに名前で呼ばれることなんて無いのに。いつかその術を教えて欲しい。
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