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無意識③
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自分でも、何言ってるんだろうと思いつつ、必ず返ってくるであろうその返事に期待していた。
無意味な寝言でそこに深い意味はないのに。
形だけでも幸せな気分を味わいたくて…。
目の前にある唇が、小さく動いた。
「…んん、なに、してんの」
薄っすら目を開き掠れた声で、予想とは大幅に違う、意味のある言葉が発せられた。
「え、あ、いや!」
まさか今起きるだなんて思ってなくて、触れそうなほど近かった距離から逃げるようにして後ずさる。
バレてませんように。緊張に震えだす掌を胸に当て押さえつけ、佐木を見つめる。
「んん…キス?」
寝ぼけ眼を擦りボーッとしながら呟いた。
どうしよう。
聞こえてた、みたいだ。
「…ちが、その、えっと…」
まだはっきり開いていない瞳が、あんぐり口を開けたまま取り乱す僕を映している。
嫌われたくない。軽蔑されたくない。
何か言わなきゃ。否定しなきゃ。
「キス、じゃ無くてえっと…」
回らない頭で必死に言い訳を探す。
「き、傷!」
「傷の具合は、どう、かなって」
我ながら無理矢理な語呂合わせのセンスに涙が出そうだった。
キスと傷って…何だそれ。
サキくんが寝ぼけてる状態で良かった。
「うん、いいよ」
何も疑う事なく、そう答えて佐木は再び目を閉じた。
その様子を見て、何とか誤魔化せたと思い、そっと胸を撫で下ろす。
再び眠りにつくのだろう。
目を閉じた佐木に、おやすみと伝えてから宿題の続きをしようと背を向けた時ーーー
「キス、いいよ」
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