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翌朝④
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「き、す?」
僕をからかうように、ニヒヒと笑う。
「うん。キス」
「…だ、誰と?」
「聞いてもゼッタイ怒るなよ」
何度も念を押される。怒られるのは、僕の方じゃないのかとも思ったが。
「うん、怒らない」
佐木の声に集中した。
「お前ーーーー
ーーの母さん。美代子さんと」
そう言ってへへっと照れくさそうに笑う。
予想外の答えに、僕は何の反応も出来なかった。
勘違い、しているのだろうか。
いや、確実にそうだろう。
そう言えば昨日、僕とお母さんが似てるとか言っていた。
なるほど。寝ボケて見間違えてるのかぁ。
お母さんと、僕を。
実に複雑な気分である。
これで良かった様な、期待ハズレの様な…。
「だからちょっと意識しちゃってさ。今朝、目合わせらんなかったんだよね」
「そ、そうなんだぁ」
「夢なのに、妙にリアルでさ。柔らかくて…なんか熱かった!」と話すサキくんに、僕は動揺を隠せないままフラフラと歩く。
「あんな夢見るなんて、俺、よっぽど飢えてたのかな」
ごめんそれ、夢じゃないんです。
現実です。
しかも相手は僕なんです。
もしそう言ったら、彼はなんて言うだろう。
ぼんやりしながら考えてみた。
でも、悲しくなるだけだった。
「ーーーあれ?何その顔」
黙って歩く僕を見てサキくんが笑う。
「何でお前、赤くなってんだよ」
怒るなって言ったじゃん!とか何とか言っているが、僕は別に、怒ってなんかない。
理由は分からないけど、涙が出そうなだけだ。子供の頃からそうなんだ。泣きそうになると鼻も耳も赤くなるんだ。
…何て、本当の事は言わない。
「夕陽のせいで、そう見えるだけだよ…」
代わりに適当な言い訳をする。急にぶっきらぼうになったその言い方は、まるでいじけてるみたいだ。
どうして?何に対してだろう。
その時の僕には分からなかった。
「夕陽って……お前、まだ寝ぼけてんの?」
朝だから夕陽なんてどこにも無いぞ。と的確に突っ込むサキくんに対して、僕は表情なくハハハと笑うことしか出来なかった。
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