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険悪②
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「……っ」
「なに?ビビってんの?大丈夫だよ。別にお前みたいなのが1人消えたくらいで、誰も悲しんだりしねえから」
一方的に言葉を放った後、長い腕がサキくんの胸ぐらを掴んだ。
普段は威勢のいい彼なのに少しも抵抗しない。
パキパキともう片方の手を鳴らす音が聞こえた。嫌な予感がする。
「ーーむしろ、喜ぶかもね」
「……や、だ」
サキくんの怯えた声が、微かに聞こえたその時。僕は意を決して飛び出した。
「あ、あの!!」
僕のその声に二人が目を向ける。
その時お兄さんの手はサキくんの胸ぐらを掴んでいたが、目が合うとすぐにパッと離した。
「…ん?…誰。」
僕に気怠そうに視線を合わせる。
「え、えと…その‥」
「……お友達?」
「は、ハイ。いつもお世話になってます、サキくんと同じクラスの倉橋です…」
僕がペコリとお辞儀をすると黙って僕の方へと歩み出て、目の前で足を止めた。
至近距離で見るその整った顔に思わず見とれてしまう。
「……ど、どうも」
「へー。キミがクラハシ君かぁ。」
頭の先から爪の先まで舐め回すような視線にたじろぐ。僕のことを知っているのだろうか。なるほどね、と一人頷いている。
「光と仲良いの?」
「え、あ、はい」
「こいつホント生意気でしょー。友達出来ないんじゃないかって心配してたんだよ」
「いや、そんな…」
「でも良かったぁ。君みたいに利口そうな子が友達で。」
そう言って、僕の肩を軽く叩いた。
その表情は柔らかく、サキくんに向けていたあの冷たい眼差しはどこへ行ったのかと思う程、冷たさなど微塵も感じさせない。
まるで別人のように、人当たりの良さそうな微笑みを浮かべている。
その切り替えの早さが、なんだか少し怖い。
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