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不仲⑤
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【佐木光】
「百城の野郎、思いっきり触りやがって」
教室を出たあと、痛む背中を庇いながら、俺は一人文句をたれた。
背中にある治りかけの傷口がズキズキと痛み、屋上へと続く階段を上る度その振動が響いて苦痛に顔が歪む。
あのノッポが気安く触ったせいだ。
「…あいつ、無駄に力強いんだから、たまったもんじゃねえよ」
アイツが冗談言いながら俺の背中に触れたとき、激痛に思わず手を振り払った。
そしたら何だ。急にムキになりだして、生意気にも突っかかって来やがった。
ひょろひょろノッポめ…怪我なんかしてなかったら、あの時すぐにでもボコボコにしてやったのに。
これじゃまるで俺がアイツから逃げたみたいじゃんか。
「気に食わねぇ」
思い出す度イライラが募る。
くそっと舌打ちしながら、歯をギリギリと鳴らす。それでも腹の虫はおさまらない。
「………はぁ」
何だか全てがイヤになってくる。
全部、嫌いだ。
兄貴も、クソノッポも、親も、教師も…。
こんな事でイライラする自分もーー。
その時、ふと倉橋の顔が頭に浮かんだ。
まん丸の目と薄ピンク色のほっぺ。いつだったかあの顔で、俺に憧れていたと話した事があった。
一体なぜ、あんな事思ったんだろう。
俺は、馬鹿で、短気で、性格悪くて、これでもかってくらい皆から嫌われててーーー倉橋のこと、ずっとイジメてたのに。
考えれば考える程、あいつの思考回路は謎だ。
それと、あいつはいつから百城の事を“モモくん”なんて呼び出したんだ。
ノッポはノッポで倉橋の事を“ユウキ”とか呼ぶし。本当に気持ちが悪い。
倉橋の奴、俺に憧れてるとか言ったくせに。
俺のためにうまい棒買ってきたくせに。
俺の事、兄貴から庇ったくせに。
俺の知らないところで他の奴と勝手に親交深めてんじゃねえよ。
くそくそくそくそ……。
「本当、イラつく」
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