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ルームメイトと紅茶もどき
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僕には前世の記憶がある。
前世の僕は、赤髪にクリクリとした大きな瞳が特徴な(僕が言うのもなんだが)可愛らしい女の子だった。
女の子の名前はエウディケ。
エウディケは全ての創造主神フェーラ・アジェスティンに仕える修道女であった。
まぁ多少…修道女のイメージとはかけ離れた女の子ではあったが…
エウディケは歌がとても上手だった。
エウディケが言葉を紡ぎ、その美しい歌声を奏でると、この世に存在する全ての者が聞き惚れる。
そこでエウディケは出逢ったのだ…彼と
そして数年幸せな日々を過ごして
エウディケは死んでしまった、彼の目の前で
久々にあの日を見たせいか、全部とは言わないが思い出してしまった。
エウディケの瞳に映った、彼の姿、声、眼差し、抱きしめる腕、…頬を伝う涙
現世では会った事すら無い、けれど誰よりも大切な存在。
「…もしかしたら…エウディケが僕に見せたのかなぁ」
そうかも知れない、言葉にするとなんだかすんなりと納得してしまった。
誰よりも近くにいて、誰よりも彼を知っている彼女(エウディケ)
言葉で伝えられない代わりに、想いで僕に伝えてきたのだろう。
「そうかも知れないねっ」
声と同時に後ろからガバッと抱きつかれ、頬にキスをされた。
いつもなら足音や息遣い、気配などで気付く筈なのに…どうやら意識が飛んでいて気が付かなかったらしい。
「…マーシェ…」
「おはよう、クラウィスッ!今日はいい日になりそうだねっ」
キスされた頬に軽く手を当てながらため息をつくと、彼は可愛らしくにっこりと微笑んだ。
金髪のふわふわ髪に碧い瞳、天使の様に可愛らしい彼は、僕のルームメイトであるマーシェルト・ドルチェ
僕はマーシェと呼んでいる。
さっきの言葉を聞いてもらえば分かると思うが、マーシェは僕に前世の記憶がある事を知っている数少ない内の一人だ。
まぁ…僕から教えたわけでは無いのだが、何故か気付かれてしまったのだ。出会った瞬間に。
「あっ、紅茶だ!!」
「――…マーシェも飲む…?」
「うんっ、飲みたいっ!!お砂糖とミルクたっぷりがいいなぁ」
僕はマーシェの言葉に、口角がピクリと吊り上るのがわかった。
……それじゃぁ、紅茶の味が台無しだ(というか紅茶じゃ無い)
いえ、別にロイヤルミルクティーが紅茶では無いと言ってる訳では無いのですよ?
ただ…ただ、マーシェが求める物は紅茶と言える物では無く、僕からすれば異様に甘いミルクジュースと言う(かも知れない)代物だ。
しかし、心の声を無視して注文通りに淹れてやる。
これでもかという位の砂糖とミルクを。
どばどばと。
どばどば…と(泣)
「ありがとー、クラウィスッ」
しかし彼は、嬉しそうに、もう紅茶とは言えない紅茶をマーシェは美味しそうに飲んだ。
「…美味しい?」
「うんっ、美味しいよ。」
にっこりと、幸せそうに微笑むマーシェ。
まぁ…飲むのは僕では無い。
マーシェが美味しいというのなら、例え原型が紅茶であった紅茶モドキであろうとも、美味しいという事にしておけばいい。
その方が双方にとって良い事なのだから。
「でも、もうちょっと甘い方がいいなぁ。これじゃぁ、紅茶じゃないよね?」
なんていう現実逃避が簡単に出来る筈がなかった。
――――――――…。
…次はあの倍の砂糖とミルクをいれてやる。
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