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少しだけ
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目を覚ますと、あと数センチというぐらいの距離にそれはそれは美しい寝顔があった。そして、僕の背中と腰に回された長い腕。
普通なら、蹴り飛ばしたり殴り飛ばしたりするはずなのに...。何でか、体が震えて動かない。怖い。どうしようもなく、凄く怖くてたまらない。可笑しい。一昨日の夜は普通に話してた。でも昨日の夕方から夜にかけての記憶がない。
「...ん?」
「ッ。」
やだ、起きてしまう。起きないで、僕から離れて。
「...震えてるのか?だったら、俺を突き飛ばせば良かったのに。」
「ぁ...ぅ...。」
「あぁ、そうか。俺が悪いのか。」
そう言って、自ら離れて行ってしまうミカ。
何で、そんなに優しいの。
「...まだ7時か。お前、風邪ひいてるから今日は学校を休むといい。お前の母親にはちゃんと言ってある。」
「...。」
「俺はお前の傍には寄らないから安心しろ。だが、此処で寝かせてもらうぞ。」
お母さんには言ってある?もしかして、会ったのかな?
しかも、床に寝転んで寝始めた。...絶対、体が痛くなるのに。それに布団なしじゃ寒いはずなのに。あ、でも吸血鬼って寒いとか暑いとかあるのかな?何かが可笑しい。昨日の夕方から夜の記憶がないのも、ミカにこんなにも恐怖心を抱くのも、風邪をひいているのも、ミカが僕のお母さんに言ったのも、ミカがこんなにも優しいのも。何か変。だけど、僕にはわからない。
((ふにっ
あ、頬は意外と柔らかい。
「...何だ。」
「ッ!!」
「...そんなに驚くな。触らないから安心しろ。」
「...急にどうしたんですか。」
「何がだ。」
「何か...変。」
「至って普通だが?お前、俺の事が怖いくせに自分から触りにくるとは..お前も変だろう。」
「何となく...何となく触りたくなったというか。あのっ、床で寝ると体痛くなります。」
「あぁ、知ってる。でも、お前は風邪だからベッドで寝ないと駄目だろう?」
だから、俺は床で寝るんだと言った。でも、そんな事したらミカも風邪をひいてしまう。
ミカは...大丈夫。怖くない。怖くない。ミカの匂いは安心するから好きだ。
「ミカも一緒に...。」
「...はぁ。お前はそんなんだから...。吸血鬼は人間とは違って性欲だとか欲望は少ない。だがな、他の物に対する欲が少ない分、血への欲は多い。だから、今傷だらけのお前を俺が食うかも知れないという危機感はないのか?」
「...何で、僕傷だらけなんですか。」
「お前が足を滑らせて転がり落ちて、川にドボンだからだ。」
「...助けてくれたんですか?」
「あぁ。帰りが遅かったからな。感謝しろ。」
「...じゃあ、お礼に血あげます。」
そっか。僕ってそんなにもドジだったんだ。じゃあ、頭を石か何かにぶつけたから記憶がないのかな。
そう思いながら、血が吸いやすいように来ていたパジャマのボタンを3つ開けて襟を開く。そして、首を傾けて目の前に差し出した。
「...今はまだ良い。お前が元気になってからくれ。」
「でも、小説で血を飲まないと理性を失うって...。」
「俺を下層の奴等と一緒にするな。俺は貴族だからな。衰弱して消えるだけだ。まぁ、1か月は保てるから大丈夫だな。」
やっぱり、小説と実際の事は違うものなのか。少しだけ勉強になった。
「だから、お前はさっさと寝ろ。」
「ミカも一緒に...。」
「怖いのに無理すんな。」
「いや、でも...。」
「俺はお前の血を飲むために此処にいるだけだ。気を遣わなくて良い。」
「僕がミカと一緒に寝たいだけだから...。気を遣うとかじゃなくて、えと...。」
「...はぁ。わかったから、さっさと寝ろ。」
そう言って、僕をベッドに戻るように急かしながら後ろを付いてくる。でも、決して触れようとはしない。それがミカなりの優しさなのかもしれないけど、たった1日しかちゃんと話してないけど...。何か違和感。
「あの...。」
「何だ。」
「えっと...。」
「ん?」
「ギュッてしてもいいですか。」
さっきは、怖かった。でも、今は触って欲しい。何でかわからない。
「あぁ、そうか。こういうのは人間も同じなのか。」
「へ?」
「風邪ひいた時、人肌が恋しくなる...あ、俺達は吸血鬼だが。」
「...そう...かも。」
そう言いながら、俺を抱きしめてくれる腕。香水ではなく、きっとミカ自身の匂い。僕よりもよっぽど、ミカの方が甘くて美味しそうな匂いがすると思うのは気のせいなのかな。もしも、ミカも僕と同じ人間だったら、こうやって会う事はなかったのかな。でも、同じ人間だったらずっと普通に仲良くなれたはず。僕は人間でミカは吸血鬼。しかも、僕がミカに血をあげたらお別れ。ミカは、僕の前からいなくなってしまう。
「...それは、嫌。」
「何がだ。」
「あ、いや。こっちの話で。」
ミカが血を飲まなくても大丈夫なのは1か月間。だったら、1か月間が終わるギリギリまで僕がミカに血を上げなかったら、少しは一緒に居られる時間が長くなるよね?あ、でも衰弱するって言ってた。ミカが衰弱するのは嫌。でも、お別れするのも嫌。一昨日は、さっさと血を飲ませてお別れなんて思ってた。なのに、何で今はこんなにも一緒に居たいと思うんだろう。
「いいから、早く寝ろ。」
「ん...。」
「俺も眠たいんだ。」
優しく頭を撫でられると、なんだか切なくなる。もうお別れな気がして。まだ、あと2日あるのに。そう、たったの2日。このまま時間が止まる事はないんだろうか...。
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