アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
理解不可能
-
人間はよくわからない。俺が居た場所は、冷たい場所だった。その辺に孤児が居ようが、死にかけの奴がいようが自分には関係ない。そんな場所。此処は違う。俺が居た場所とは逆の場所だ。
今、目の前で寝ているコイツ。さっきまで俺の事を拒絶していたくせに、俺が床で寝ようとしたら頬を突いてきた。何なんだコイツは。昨日の記憶はちゃんと消した。あと、コイツを犯した奴等も一応、記憶を消したのとコイツに近づけないようにしといた。まぁ、それほど大したものではないが。...人間は理解不可能な生き物だ。
「...寝たか。」
俺も眠いから寝るとは言ったが、本当に寝るわけないだろ。
この家には誰もいない。だから、風邪ひきのコイツを看病する奴が誰1人としていない。まぁ、居たとしても俺は起きていたがな。
勝手にこの家を歩き回っていいのかわからないが、今回は見逃してもらおう。まずは...アレだ。冷えピタっていうのだ。確か、冷蔵庫にあると言っていたな。あとは、飲料水と汗を拭くタオル...食事はまだ良いか。いや、でも朝食を取らないと駄目なのか。俺達は、あまり食べないから特に気にした事はなかったが...。でも、さっき眠ったばかりだ。9時になったら作り始めよう。
((ガクッ
「ッ!!」
...危ない。あと少しで、階段の角に顔をぶつけるところだった。
あと2日か...。案外、症状は早く出るものなんだな。司以外の人間の血を飲むという選択肢はあるが、生憎飲もうという気にはならない。もちろん、司のもだ。生きている間だけはせめて、完璧な人間にはなれないが、人間っぽく生きてみたい。普通に食事を取り、風呂に入り、夜に眠り、笑い合い。司には悪いが...いや、喜ばしいか。俺が1か月血を飲まずに保てるというのは嘘だ。本当は、1週間しか生きていられない。
お前は、この事を知ったら喜ぶだろう。やっと、もとの生活に戻れると。そう思い、お前は笑うのだろうか。俺が1度も見た事がないお前の笑顔。俺は最後まで見る事は出来ないのだろうか。...それは気に食わない。せめて、最後の別れの間際でも良い。お前の笑顔を見たい。だから、俺は最後の最後までお前に尽くしてやろう。
((ガチャッ
「...ミカ?」
「悪い。起こしたか。」
「ううん、大丈夫。」
「そうか。」
ドアを開けると、司が上半身を起こして座っていた。
...てっきり、深く眠りについたと思ったのだが。浅かったか。まぁ、良い。とりあえず、着替えさせよう。
「司、これで体を拭け。着替えはこれで良いか?」
そう言って、勝手にタンスの引き出しからだした水色と白のストライプのパジャマと持って来たタオルを差し出す。すると、司は素直に受け取ってパジャマを脱ぎ始めた。
「...ん。」
「着替えるのも困難か。」
「...ごめんなさい。」
「謝る必要はない。風邪で弱っているんだ。」
ボタンを外そうにも中々外せないらしい。だから、俺が代わりにパジャマを脱がせてやる。だが、そうすると嫌でも目についてしまう痛々しい傷跡。
...これは手当てもした方が良かったか。
一旦、服を着替えさせて救急箱をさっき脱衣所で見かけたから、それを取りに行こう。
((グイッ
「どこ..行くんですか。」
「脱衣所だ。」
「...何でですか。」
「傷の手当てをしてなかったからだ。」
「...手当てしなくても平気です。」
「いや、しないと跡に残るだろ。」
「...ぁ。」
そう言って、掴まれた服から司の手を離した。
「素直に言ったらどうだ?どこに行くかじゃなくて、傍に居て欲しいんだろ?」
「...うん。」
「最初からそう言えば良かったんだよ。」
俺に気を使う必要なんてない。言いたい事は言えばいい。して欲しい事があればそう言えば良い。俺はただ、お前の血をもらう為だけに此処にいるんだ。...まぁ、今では違うが。
少しだけ司にベッドの端へと詰めてもらい、もう1度ベッドの中に入る。
コイツはまだまだ子供だな。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 11