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死が二人を分かつまで~パラレルペダルT2~R18腐二次創作T2その愛と死
神が結んだものを2②完結~腐弱虫ペダル二次創作手嶋目線
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「ひどい接客だな」
「るせえ」
何となく気持ちがささくれて、そっけない対応になってしまう。
よくないよ。
指輪が言うけど、俺の気持ちはおさまらない。
ともすれば、黒田にさえ当たり散らしたいほどの気分。
めちゃめちゃだ俺…
黒田は口の端で笑み、客を向き直って流暢な英語でやりとりした。
デザイナーは芸術家気質で、きょうはいささか気難しいようです。
まだこの町にお留まりなら、はい、こちらからご連絡を、はい。
やりとりを聞きながら、連絡なんかしねえ、と思う俺がいて。
去る客に、ていねいにお辞儀してから、黒田は俺に向き直った。
「ティータイムといこうか手嶋君。きみ、いいよね」
日本自転車連盟からつけられているアシスタントに一声かけて、黒田は俺を表に連れ出した。
別パビリオンとの共同部分にサンルームみたいなカフェがある。
プラスティック椅子のーつにどっかと腰かけた黒田は、隣の椅子を指差した。
「座れば? それとも俺の膝乗るか?」
「殴るぞ」
言いながら、隣に座る。
不意に感じた。
こいつ俺を慰めに来たんじゃない。
こいつ俺に慰めて欲しくて来たんだ。
座り直し黒田を見る。
黒田は黙ってカップを見ている。
プラでも紙でもないカップ。
再使用にも再々使用にも耐え、砕くと一年で砂に還る…
時代が生み出した、商品。
時代。
何かが頭に閃いた。
金城さん。
荒北さん。
黒田。
MIT。
マサチューセッツ州
マサチューセッツ州!
アメリカで最初に同性婚が認められた州!
黒田を見る。
頷く。
「いつだ」
「あすだ」
どうやって。
「車で来てる」
黒田がニヤリと笑った。
メッチャ値張るだろうスポーツカー~屋根開閉出来るタイプの、めちゃめちゃカッコイイやつだ~運転しながら、黒田はポツポツと話した。
泉田を、愛していると思っていたし、愛される自信もあった。
幼なじみ昇格LOVE。
でもそれは成立しなかった。
泉田が選んだのは新開さんだった。
新開さんが死んで、壊れた泉田を生き返らせるのが自分だと思ってたけど、立ち直らせたのは銅橋だった。
悠人は新しい日々に踏み出し、俺一人、立ち尽くしてる。
どこへ行く。
どこへ行こう。
そして思い出したんだ。
俺は荒北さんを見返したくて箱学自転車競技部に居残ったんだって。
だから愛すべき人はって…思ったら、何のことはない、金城さんに、
金城さんに後れとっちまって…
俺、ホントバカみたい。
右往左往してただけ。
研究の成果とかは誰にもひけをとんないのに、色ゴトはからっきしだあ‥
俺は黙って聞いていた。
出会いの妙。
あの時あいつに声かけなければ。
チーム二人を組まなければ。
愛さなければ。
傷つけなければ。
If
If
If
でも俺たちは出会ってしまい、愛し合ってしまい、引き裂かれてしまった…
紛れもない事実。
そして事実を持っているだけ幸せで、黒田には、それすらないのだ。
「俺は祝福に行く。おまえは」
「異議の挙手する。そして玉砕する」
「それでいい」
頬に水滴が当たる。
雨は降ってない。
黒田の涙が風に吹きちぎられているのだと気づくまで、たっぷり二秒かかった。
式にはぎりぎり間にあった。
牧師と金城さんと荒北さんだけの、あまりにもシンプルな式だった。
あの三白眼がレースのウェディングべールつけて、タキシード姿の金城さんの傍らにおとなしく立っている。
(さすがにドレスではなく、何とGパンとTシャツだった。)
ちょうど異議受付の場面で、黒田は思いきり異議を挟んだ。
「そんな他校のやつじゃなく! 可愛い後輩を選んで下さい!」
振り向いた荒北さんは耳まで真っ赤になったけど、チョイチョイッと黒田を手招いた。
ちいさな子供にするように、髪をくしゃっとやってやる。
「長いことフリーだったんだぜ俺。おまえ、ほんと間が悪ィ」
頬にひとつキスして言う。
「幸せになんな?」
黒田は子供のように泣いて、式次第はかなり遅れた。
ブーケは黒田がもらった。
トレックの故郷ウィスコンシンへ向かうという金城さんたちと、空港で別れた。
黒田も研究室へ戻るという。
俺は…どうしよう。
と、スマホにメールが入った。
『ブースにキャノンデールの人が来ました。話を聞きたいからベセルの本社まで来てほしいそうです』
そうくるかあ。
嬉しげに光る青八木を感じた途端、俺は突然泣き出した。
人目もはばからず、声を立てて泣いていた。
やっと泣けた…
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