アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
死が二人を分かつまで~パラレルペダルT2~R18腐二次創作T2その愛と死
大晦日―手青―~R18腐二次創作弱虫ペダル手青
-
ニットキャップが似合わない。
笑うと怒る。
ああ怒れ。
ぶってもいい。
おまえが生きててくれるだけで、俺は嬉しくてならないんだ。
髪なんかなくていい。
おまえが生きててくれるのだから。
SHOP AOYAGIの開店準備で毎日が飛ぶように過ぎる。
元気になった一と二人で経営するために、準備はあくまで入念に…
と。
DMのデザイン~もちろんデザイン起こしは一だ~確認してたら、ロードウェアのやつが二人、視界の隅に入ってきた。
「開店新年からなんすけど?」
目を上げると、何のことはない、やつらだ。
お、と片手を上げるのだけど、鏑木一差は俺に噛みつきそうな目を向けてるだけだ(いつも通り)。
背後で段竹がすみません、みたいな表情。
さすがにちょっと腹に据えかねてきてるんだが。
「今日は何の用だ」
「文句」
「文句は聞かん」
「言わせろよ」
「聞かねえ」
無視して作業を続けると、
「てしまじゅんたっ!」
「先輩呼び捨てすんのかっ」
にらみ合ってるとこへ、分厚いコート着てマスクして、ニット帽かぶってあいつが…
「青八木さんっ」
鏑木の声がコロッと変わる。
『ご主人たま!』状態の犬。
こんなんで国内有数の走り手って…絶対嘘だ。
「また純太困らせてる?」
「困らせてなんか。ねえ。手嶋先輩?」
つい今しがた“てしまじゅんた”と呼び捨てたのはどの口だ?
犬はマジで尻尾振りかねない勢いで、一の周りをぴょんぴょんする。
「もう出歩いていいんですか」
「ばたばたするな! 一は感染に弱いんだ」
「知ってますよ。風邪とかひいちゃいけないんだ」
「ホコリもいやだ」
一が言うと、
「すいませんっ」
だから俺も言ったろが!
「七日から開く。今日は帰れ」
「はいっ」
キランキランの笑顔で言い、
「段竹帰るぞっ」
ご機嫌で帰っていきやがった。
「二度と来るな!」
後ろ姿に叫んで、ピシャリと表戸を閉める。
「何で俺の女房に」
言ってから、何かカッと赤くなる。
「純太可愛い」
事務机にもたれかかってる一がからかうように言いやがる。
「抜かせ」
一の後ろに回り込み、前抱えるように位置取る。
「俺夫」
そうくるか。
「じゃあ俺が嫁か?」
「嫁。俺、可愛いがる」
「それも嬉しいけどさ」
うなじにキス。
一があ‥とロの形だけ変えて仰け反った…
「こんな俺で…いいか…」
「おまえだからいい」
俺たちの指に対の、プラチナの指輪が光り合う。
試されて、生きのびた、この年。
もうすぐ鐘が鳴りはじめる。
「百八全部」
「一緒に聞こうな」
今大切なものは腕の中。
一差の骨髄に救われた命。
それでもこれは一生俺だけのもの。
いいよな?
「って手嶋思ってるんだぜあのヤロー。おれのこつずいが救ったのにーっ。てしまのバカーッ!」
「いーかげんおまえもしつこいぞ」
「しつこいかな」
「しつこい」
「しつこいか~」
一差は真剣に考えてる。
言うかな。
いよいよ。
その時か?
「しょうがないなぁ。段竹おれ…」
オマエノモノニナッテヤルヨ。
ロがそう動いたのは見たけれど、声は鐘にかき消された。
「何って?」
一差はただただ赤くなってる。
「知らね」
フェルトを瞬時に加速した。
これでまた一年棒に振るな。
ちょっと皮肉な気分で、俺はペダルを漕ぎ出した。
最後の鐘。
明けまして…
明けまして世界。
一差。
おめでとさん。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 39