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11年後①~パラレルペダル箱学編R18腐弱虫ペダル二次創作
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※ あくまでパラレルペダルです。
走る男たちの流れを捨てて、全く別の目で見ていただければ幸いです。
それは、一瞬の出来事だった。
この坂を下り切ったら市街地、という場所。
一般車両が増えてきて、無茶できないなと思ったそのとき、軽トラに追い越された。
運転者はハンドルにつっ伏していた。
「!」
前の横断歩道には横断中の母子。
子供は四人。
一人背負い、左右の手に二人引き、一人は完全フリーだった。
フリーの子が取り残され、咄嗟に新開さんは反応した。
子どもは助かり
僕は新開さんを目の前で、完璧に失った。
世界は色を失ってしまった。
いつもモノクローム。
単調で、無器質で、冷たい怒りに満ちている。
何も考えられなくなった僕は低きへ、低きへと流れていった。
美しい顔立ち(と言われ)美しい筋肉(と言われる)。
夜の街でただただ酒に溺れていたら、悪い奴らに絡めとられ、今では顔役の情夫(イロ)。
気に入られて、拉致られて、手下七十人衆人環視の中で犯られて、映像も押さえられ、だからといって口惜(くちお)しくもなく、能面のように受け流す僕を顔役いたくお気に召し、以来一番愛人に擁されている。
ケツ愛人と蔭口たたかれてるのもシャクなので、気に入らないの片っ端から殴り倒してったら株も上がり、ケツ愛人は今や斧川会の実質NO.2となってしまっていた。
黒田も悠人も何度も叱りに来てくれた。
葦木場でさえ一度来て、
「こんなとこ出なよ。らしくないよー」
と、一生懸命叱ってくれたけど、ごめん、僕の心には届かなかった。
どこまで行ってもモノトーンの世界。
道でサーヴェロに往き遭うときだけ心の奧がチリチリする。
唯一カラーな映像がある。
それは夢。
新開さんと走る夢。
そして最後に必ず真っ赤に染まる。
ガードレールと軽トラにはさまって、挽き肉のように挽き潰されるあの人を、繰り返し見させられる。
夜半に何度叫びながら目覚めたことか。
斧川が隣にいるときは、叩き起こしてめちゃめちゃにしてもらう。
いないときは、自分にバラ鞭を使う。
狂信的な宗教家みたいに、膝立ちの全裸の自分を肩越しに打つ。
打って、打って、打ち据えて、血だらけになって気を失い、死んだように眠る。
そんな僕を、下の者たちは陰で女王とか呼んでるらしい。
Mの女王様、いや違う、あれは自分に対してSなんだ…
とにかく僕は、自分が許せなかった。
どうしてあの時。
僕は黙ってみていられた。
どうして一歩早くとび出して、この身で代わらなかったのか。
そんなに自分が可愛いか。
おまえは最低だ。
そんな僕の、癒える間のない鞭傷を、撫でながら、舐めながら、斧川は繰り返し言う。
おまえが不憫でならねえ。
頭も悪くねえ、学もある。
何でここまで堕ちてきた。
目ェ覚ませ。
叩き落とした張本人に言われるのだから片腹痛い。
この十年、幸い警察に立ち入られるような無様な失態はなく、斧川会がクスリとかに手を出さない、ショバ売り、仕切りメインの、昔気質のヤクザさんなおかげで、僕はとりたてて声を荒げる必要もなく、ことを果たしていた。
N町の祭礼を仕切って帰る道すがら、僕はたこ焼きを焼いている中年の女に気づいてはっとなった。
女も僕を見てはっとなり鉄板を放り出して駆けてきた。
「あなたあのときの、自転車の方ですよね!」
僕はただ立ち尽くしている。
頭ではわかっている。
あのときの子連れの女だ。
だが言葉にならない。
恨めばいいのか憎めばいいのか許せばいいのか。
何もわからない。
女と僕の間に、若いのが立ち塞がる。
「泉田さんに慣れ慣れしいだろう!」
「失せろアマ!」
女は屋台の方へ引き戻されてゆくが、その間も僕に叫んでいた。
「あの子、十六です。箱学入りました。自転車やってます。自転車やってます!」
僕はその場を後にした。
十年揺らさないようにしてきた感情が、爆発ぎりぎりのところにあった。
でもまだ揺らしたくなかった。
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