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11年後④完結~パラレルペダル箱学編R18腐弱虫ペダル二次創作
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大きな躰が僕を包み込む。
あんたは俺だけのもんだ。
ことばにはしないおまえの瞳がそう言っている。
あの日墓前でおまえは言った。
新開さんに許可もらいましたから。
あんた、以後一生俺のもんですからね。
でも僕にはいま、所有者がいるんだよ。
誰ですそれ。
どこの誰ですそれ。
俺行って話(ナシ)つけてつけてきます。
だめだ。
やつら裏社会だ。
裏社会でも何でも人でしょう?
話せばわかりますよ。
でもって斧川さんの前に二人で立った。
会長は何も言わなかったけど、俺の直下の安藤と立馬(たつめ)が怒り狂った。
結婚退職はねえんだよ。
あんたがトチ狂ってるこの睫毛の兄さんはな、もう十年もうちの会長の‥
「よさんか」
会長~斧川丈繁~が、初めてロを開いた。
「モノにした夜から十年、こいつは一度たりとも笑ったことがない。
おまえはこいつを笑わせられるのか?
笑わせられるなら、俺はこいつから手を引いてもええ」
おまえは即答してくれた。
できます。
逆に僕は言った。
「何で言い切れる。僕は何も抜け出していない。何も終っていない! おまえのことを愛したこともない! これまでも! これからも!」
そしたらおまえは言ったんだ。
大丈夫。
愛しますよ絶対に。
僕は思わず黙り、会長は高笑いした。
「芙美、あれ持ってこい。こやつ、唯一無傷で儂んとこから去るぞ」
姐さんがDVDを持ってきた。
「コピ一はないよ。とっとと行きな。そのデカブツとでも誰とでも」
ちょっとだけ間があって、
「幸せになんな」
フランス行きの飛行機が、夜を引き裂いて飛んでゆく。
機中寄り添っている僕たちに、誰も奇異の目を向けない。
そう、世界では同性婚さえ成り立ち始めているこの時代、僕は何を恐れていたのだろうか。
「で、僕は何をすればいいのかな」
「前回十七位どまりでしたからせめてヒトケタにはなりたいです。泉田さんには俺引かせたげますよ」
「ブランク十年だぞ」
「そっちも鍛えてあげますよ」
銅橋正清。
箱学での一年後輩。
ただひたすら走りに真摯だった男。
一途故に誤解され、先輩方にも同輩にも尊大な奴と思われていた。
みんなが僕を社会復帰させようと躍起だった間、銅橋は決してせかさなかった。
その間、こいつはまっすぐにツールドフランスを見つめていた。
僕を迎えに来る資格を得ようとして。
そのためだけに。
ばかだ。
本物のばかだ。
だから僕もついこの手を取ってしまった。
新開さんごめんなさい。
僕はこいつと生きてみます。
来年のツールで成果出せたらそのときは、杉森良にサーヴェロ贈ります。
こんな僕、ずるいですか?
でも僕生きます。
生きてみたくなりました。
ごめんなさい。
新開さん。
愛を…ありがとう。
夜間飛行。
そしてその向こうには明日がある。
たぶん…
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