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青春、まどろみと憧れの中で目を覚ます
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「つっ疲れた…」
「お疲れ。オレンジジュース飲むか?」
サッカー部の練習が終わった薄暗い運動場には、倒れかけているヒナトに買ってきたジュースを差し出すリョウがいた。
たかが学校の部活動だと油断しきっていたヒナトを打ち砕いたハードスケジュールだったが、リョウには大したダメージを与えられなかったようだ。
なんだこの格差は、と今まで喧嘩しかしてこなかった自分を殴りたくなる。
「大丈夫か?」
「…多少落ち着いた」
リョウからもらったオレンジジュースで何とかしゃべれる程度にのどが回復した。
ぐったりとベンチの背もたれに腕を投げ出し、暗くなってきた空に漂う雲を眺める。リョウもヒナトの隣に座り乾いてきた汗をぬぐい始める。
奇妙な沈黙が場を支配した。二人とも息苦しいとは思っておらず黙々と自分の時間を過ごした。
やがて退屈を持て余したヒナトに、リョウの苦笑いが向けられる。
「いやしかし疲れたな。結構きついとは聞いていたんだが」
「お前それ俺に喧嘩売ってんのか?余裕綽々な笑顔浮かべやがってよ」
「俺はいつも笑っているよにぱーっ」
口角を指で引っ張り上げて奇妙な面相をするリョウに、小さく噴き出すヒナト。
「…まあ悪くはなかったな。殴り合い以外で汗流すってのは、なんか疲れるけど数倍気持ちいわ」
こんな心地よい疲れなど体験したことがなかった。殴って殴られてした後の余韻は吐き気がするほど痛く重いものだった。それが手段を変えて汗を流すだけでこんなに違うとは。
新しい世界が見えた気がして、ヒナトはうっすらと沈んできた空を見上げる。リョウはそんなヒナトを微笑して見つめる。
「ヒナトが楽しかったなら、俺も誘った甲斐があったよ」
いつものおどけた様子ではなく、心からそう言っていると何故か直観することができた。幼馴染特有のテレパシーだろうか。
ヒナトはその言葉に少々赤くなりながらも、不敵な笑った。
「見てろよいつかてめぇなんざ相手にならねぇようにうまくなってやるよ」
「ははは!そんな日がくるんだろうか?百年後なら分らんかもしれんが!」
「そんなもん死んでるに決まってんじゃねーかくそったれ!」
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