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GENESIS -創世記- 更新再開。右の注意書きを最後まで読んでください。
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人はなぜ、死者を弔うのだろうか。
死者に意思はなく、そこには何も伝わらないのに。
兄の葬儀。
自殺したこともあり、小さな身内のみで行う自宅での葬儀となった。
兄を心から愛していた母は、眠ることなく泣き続けていた。
化粧なんてしていなくて、泣き腫らした顔はグッと老けた様に見える。
父はそんな母を気然と支えていた。
だが、時折苦痛な顔をしていたことを俺は知っている。
父も我慢しているのだろう。
俺は他人の様にそれをただ見ていた。
葬儀が終わり、親戚が帰る。
両親も兄の顔が見れないと自室に消えた。
部屋には、俺と兄の器だけが残った。
死化粧を施された兄はまるで、西洋人形のようだ。
肌が綺麗で傷がない。
しっかりと閉じられた瞼から流れるまつ毛は長くしなやかに見える。
鼻筋はスッと通り、顔が小さい。
生まれつき色素が薄く、髪も明るい茶色で白い肌に良く映えている。
ハーフと間違えられることも多かったほど、日本人離れをした美しさを兼ね備えていた兄。
抜け殻になってさえ、その美しさを失ってはいなかった。
だが、もうそれも、明日には業火に焼かれ灰となるのだ。
「この度は、非常に残念なことでした。お悔やみ申し上げます。」
学ランに身を包み兄の顔を見つめていた俺の背後から突然声が届いた。
ゆっくり振り向くと、そこには兄と同じブレザーを着た男がいた。
白い肌に、人工的な明るい茶色の髪を女の様にストレートに肩を越すほど長く伸ばした、どちらかといえば中性的な印象の男。
俺に声をかける辺り、兄と仲の良かったクラスメイト、ってところか。
「……どうも。」
「ご焼香…してもよろしいですか?」
「……どうぞ。」
「ありがとうございます。失礼いたします。」
男は兄の棺の前にある焼香を済ませ、手を合わせてうつむいた。
兄の友人は葬儀に呼ばなかった。
自殺だったから。
母が呼んだのだろうか?
「…君は、侑希の弟の…確か、涼一(リョウイチ)君、だったよね。侑希から話を聞いています。」
「……どうも。」
「聞いていた通りです。15歳なのにすごいオーラを持ったすごい男前だって。…でも、侑希とはあまり似ていないですね。」
「……はぁ。」
なんだこいつ。
今いうことか、それ。
「あ、失礼しました。僕は 、佐伯 葵(サエキ アオイ)と申します。侑希と同じ、聖陵(セイリョウ)学園の高等科二年です。クラスは違いましたが、侑希とは仲良くして頂きました。」
「……はぁ。」
「…侑希は自殺だったそうですね。本当に残念です。僕の唯一の友達だったから。」
あぁあぁ、やっぱりそうか。
お前も。
人間が死者を弔うのは、所詮自分のため。
死者のためなどではない。
ただ、死者においていかれた自分が哀れで泣いているのだ。
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