アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
影の想い 2
-
「おにいさん?・・・。」
美風が学校から戻って灯真の部屋の前を通りかかったとき、めずらしく
ドアがきっちり閉まっていなかった。
なにかあったのかと、美風は小さな声で兄を呼びながら中を覗いた。
ベッドの縁に腰掛けたふたつの影が重なっていた。
一瞬にして、見てはいけないものを見たことはわかったのに、
美風の目はそのまま釘付けになってしまった。
灯真と櫂が、抱き合って唇を重ねていた。
二人でなにか囁きあいながらキスを交わしては笑っている姿は
あきらかに恋人同士のそれで、美風は目をみはったままその場で硬直してしまった。
そんな彼女に、ふたりは全く気付いていないようだった。
灯真の指が櫂の上着を脱がして行く。
二人とも、シャツのボタンはすでに外されていて、肌が露出していた。
「ああ、待って。鍵が開いてる。」櫂の言葉に心臓が跳ねた。
急いで一歩横にずれてドアの影に隠れた。
足音が近づいて来て、すくみあがる美風の鼻先で
「いけない。鍵どころかドアが開いてた。」と声がする。
櫂は廊下を確認することなくそのままぱたんとドアを閉じた。
かちゃり、と施錠する音が聞こえた。
美風は音もなく大きな深呼吸をして、ゆっくり3歩後ずさると、
くるりと踵を返して自分の部屋に駆け戻った。
おにいさんと。
櫂さんが。
おにいさんと。
櫂さんが。
抱き合って。キスしてた!!
おにいさんと櫂さんが!!
同じ単語がぐるぐる頭を駆け巡って頭蓋骨をつきやぶりそうだった。
自分の部屋に駆け込むと、ばさっとベッドに倒れ込む。
これまでのふたりの姿を出来る限り思い出してみる。
「ああああああああ。そういうことかああ。」
思い当たる節ばかり。
「あたし・・・・・。」ばかみたい。胸が詰まった。
花壇での一件以来、無意識に櫂を眼で追っている自分に気付いていた。
おにいさんと仲良くしてると、櫂さんがすごく喜んでくれる。
おにいさんのことも嫌いじゃないけど、ちょっと気難しいところもあるし、
特殊な人だから、どう接していいかわからないところも多くて。
でも櫂さんが喜んでくれるからわたし頑張ったのに。
櫂さんの、おにいさんを見るまなざし。さっきの、キス。
・・・・・やばい、泣きそう。
美風は頭に布団をすっぽりかぶせた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 27