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試練 6
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それから、つめたいモルタルの壁に寄りかかって、少しうとうとしたようだった。
ずっと後ろ手のままなので、肩が痛んで眼が覚めた。
はっと気配を感じて顔を上げると、リーダーの男がすぐそばに立っていた。
カチャリ、とベルトを外す音。
「おい、さっきの。もっかいやってくれよ。」
飲んでいたらしい。かなり酔っているようだった。
背中を悪寒が走る。
先刻の雫には、自分に人質としての価値を納得させるためと、
美風のからだに男達の意識を向けさせないため。二つの目的があった。
が、今はもうそのどちらもない。
「今日はもう勘弁してくれ。」そう言って顔を背けると、
脇腹をしたたかに蹴り上げられた。
「ぐっ・・・。」踞る。
「てめえの都合なんざ聞いてねえよ。やれっつったらやるんだよ。」
髪を掴まれて引き起こされ、むき出しになった股間に顔を押し当てられた。
「おら。さっきみたいに銜えろ。」
「・・・!」
必死に抗うが、体に痛みが加えられるだけで、状況は少しもよくならない。
いっそほんとに噛みちぎってやろうか。一瞬そう考えた。
が、固く閉じた唇に、強引に押し当てられているものを、拒む気持ちのほうが勝った。
雫は渾身の力を振り絞って体を捻り、男の体から離れた。
息をつく間もなく、舌打ちとともに引き倒される。
「そんならケツ出せ。こっちも女みてえに仕込んであんだろ。」
「!」ベルトに手をかけられた。
「イヤだ!離せ!」
「うるせえ!」また殴られる。
もうすでに、体もこころも限界だった。
こんなヤツに犯されるのか。
なんとか自分を支えていた糸がふっつりと切れた。
いったい、どれだけ。
どれだけ痛めつけられ汚されたらすむのか。
これが罰なのか。
もうイヤだ。ここから今すぐ消えたい一心だった。
背後から酒臭い体にのしかかられた瞬間、ほとんど無意識に。
自分の舌に思い切り歯を立てていた。
ぶつり。
いやな音がした。口腔に生暖かい液体が一気に溢れる。
「かふっっ。」その液体にむせた。目の前の床が赤く染まる。
「貴様!なにして・・・おい!」
遠くで誰かが叫んでいた。
美風がいれば。彼女がいれば灯真は大丈夫だと思った。
彼女がきっと、灯真の眼になってくれる。
灯真さん。ごめん。
また約束をまもれなくて。ごめんなさい。
ずっとあなたの影でいたかったのに。
ああ。
たましいだけでも。
あなたのもとへかえれるだろうか・・・。
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