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光さす場所へ。 1
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街はずれの渓谷にかかる橋。
観光道路なのでシーズンオフの早朝、走っている車や人影は皆無だった。
交渉場所の橋の、対岸のたもとまでは、車を許された。
白くて長いアーチ状の橋を、灯真一人で向こう岸まで渡る。
中央が高くなっているので、向こう岸の様子はこちらから全くわからなかった。
目の見えているものですら、不安を感じる状況。
運転席の長瀬は、もう一度遺留を試みたが、灯真の決意は固かった。
こちらもどうしてもと着いて来た美風が灯真の手を握った。
「おにいさん。」
「大丈夫。櫂は僕が連れて帰るから。待ってて。」
妹ににっこり微笑んで、ずっしりと重いトランクと、白杖を手に車を降りる。
重さ10キロの札束の入ったトランクは、非力な灯真が持つには
かなりの負担になった。
普段の灯真が言葉一つで動かしてきた金額の重みが、ずっしりと腕に響く。
だが、雫の命の重みだと思えば、まだまだ軽い。
いや、雫や美風に、値段なんかない。
金とひきかえにできると思われたことがすでに赦せなかった。
怒りの感情をエネルギーに、トランクを持つ腕に力を込める。
噛み締めた奥歯に、血の味を感じた。
雫。僕が行くまであきらめずに待ってろ。
死んだら許さない。
今、行くから、待ってろ。
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