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光さす場所へ。 3
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「雫。」
雫の声に灯真は立ち止まった。車のスライドドアが開く音がした。
まだかなり前方だ。灯真は耳で距離を測った。
どさり、と柔らかい物が地面に落ちる音。うめき声。
「雫?」
男の声がした。
「あんたの大事な人はここだよ。」
「今、そこまで行く。」
声のするほうに耳を向けるように、首をかしげて灯真が応えた。
「金はそこに置け。」
「・・・・。」
男の仲間らしい足音が、ひそやかに近づいて来ていた。
おそらく気付かれないようにしているつもりなのだろう。
見えないと思って侮っている。が、灯真の聴力のほうが上だった。
二人・・・。
そのままおとなしくしてれば交渉成立だったのに。
彼らが自分に近づくより早く、灯真はトランクをあけてその中身をぶちまけた。
橋の上は風が強い。
その風に煽られて札束が紙吹雪のように散った。
男達の悲鳴が聞こえた。
「おい!嘘だろ!」
「帯封してないのかよ!」
おそらく、灯真を拘束するつもりだった二人の男は、金の回収にやっきになった。
前方から怒声が飛んだ。
「ふざけやがって!こいつがどうなってもいいんだな!!」
「よくはない。」
身軽になった灯真が、杖を頼りに再び進み始めた。
「約束通り金は持って来た。雫を返せ。」
「くそっ!!・・・か、返してほしかったら、そこに跪け!」
灯真の足がとまる。
「最初っから気に入らねえ!!すましやがって! 何様のつもりだ!
そんなに大事なヤツなら、お願いします返してくださいと、土下座しろ!」
「やめて!」雫の声がして、鈍い衝撃音とうめき声が聞こえた。
灯真の顎関節がぎり、と音をたてる。鼻筋に皺が寄った。
「雫に手をだすな。」
あんな下衆のいうことを聞く気は最初からない。
とにかく雫のそばに行く。たましいが呼ぶのだ。
殺されるのなら二人一緒に。ただそれだけのこと。その覚悟はある。
だけど、このまま雫を死なせるわけにはいかない。
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