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誰かが誰かを愛してる①~腐二次創作弱虫ペダル金城目線
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※ 『靖友消失』の続きです。
福富と新開と泉田が、とるものもとりあえず駆けつけてきた。
熱い友情。
会わせてやれればいいのだが、今のやつは俺と田所にしか心を許していない。
俺たち三人なら、水痘の入院の時程度のことに思っていられるのだろう。
あいつが不憫でならなかった。
「俺のストーカ一だったというのは本当か」
福富寿一が問いかけてきた。
おそれを含んだ口調。
それでも正直に言うしかなかった。
「残念ながら本当だ。小学生の頃から狙ってたらしい」
「でもって俺がいつも一緒だったから、手出しできなかったって?」
新開隼人がロを挟む。
俺は頷いて見せた。
「相沢正三と千田広。名前に覚えあるか?」
福富は首を横に振る。
「父の取り巻きだったとも聞かないし、学校関係者でもない」
「ストーカーだったんですよきっと。縁もゆかりもない本物のストーカー」
泉田塔一郎が怯えを含んだ声で言う。
確かにそんなやつらから、どうしたら身を守れるというのだろう。
「荒北! 俺だ!」
やむにやまれぬ気持ちだったのだろう。
福富は声を張り、室内に声をかけた。
「ばかよせ!」
俺がおしとどめる間に、室内からはかん高い悲鳴が上がった。
「うわあああああああっ!」
医者とニ人の看護師が、タタタと駆けてきて室内に消える。
入れ替わりに田所が出て来ざま、福富に一発フックを見舞った。
「てめえの感情だけで騒ぐんじゃねえ!」
吹っ飛んだ福富を、新開と泉田が支える。
田所はフン! と鼻嵐を吹いた。
「てめえらは俺とロビーだ。金城、おまえはついててやれ」
病室へ入ってゆく俺の背に、福富たちの視線がいつまでも感じられていた。
病室に入ると、処置をすませた医師たちが、ちょうど去るところだった。
「あまり興奮させてはだめだよ」
叱りとばしたいとこだろうに、担当医は忍耐づよい人物なのだった。
一礼して見送る。
そして顧みると、靖友は子供みたいに泣きじゃくっていた。
「やつらがいるっ。まだ俺のそばにいる! 俺の中にもいて、俺を、俺を!」
肩を抱くように横に座る。
「いない。みんな俺がぶっとばした」
「うん。見た」
うなづく靖友の視線は、何か虚空を見ている。
「俺…誰?」
「荒北靖友」
「あらきたやすとも?」
「そうだ」
「ふくとみじゅいちじゃね?」
「違うな。おまえは生まれてこのかた、ずっと荒北靖友だ」
「そおかぁ…」
感心したみたいに呟く。
そしてあらためて俺に聞くのだ。
で?
あんたは誰だ?
相沢たちから福富を守りたい一心で、靖友は友になりすました。
丸ふた月。
肉体を貪られながらのサバイバル。
狂気は靖友に感染し、かれは今、いささか混乱している。
荒北靖友であり福富寿一でもある。
あるいは、
荒北靖友ではなく、福富寿一でもない。
そんな靖友に自分を取り戻させることに、俺は今全霊を傾けている。
あした治るかもしれないし、一生治らないかもしれない。
でもそんなことはどうでもいいのだ。
やつの不在の間、俺は考えに考え、ひとつの結論を得た。
俺はこの男を愛している。
ガラス細工のように脆い、強がりで、いささか甘っちょろい、でも心からなを思えるやつ。
最悪俺のことなんか忘れてしまっても構わない。
俺は靖友を靖友に戻す。
俺は金城真護。
諦めない男。
悪辣なやつらから靖友の肉体は取り戻した。
あとは心だ。
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