アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-黒澤side29-
-
それから、3年B組の担任業務を淡々とこなしていたが、恐らく癖なのだろう…どうしても孤立している生徒に目がいってしまう。
まずは、柳原真尋。留年するぐらいだから、どれくらい非行に走った奴なんだろうかと1年からの記録を見たが、これといった問題行動は何も無かった。
1年の時の写真では髪も真っ黒で、前髪は長く、どちらかと言うと暗いタイプに見える。こいつに何があったのか、2年からいきなり不良グループと絡むようになり、髪も金髪にしてピアスを開けたようだ。……当時の担任はもう転勤していないが、家族構成など柳原について“不明”と記されている項目が多い。自宅訪問も1度も親が立ち会っていないと記載されている。
「様相のわりには成績も……大して落ちてねぇな。」
2年以降も成績は全て平均点以上で、風紀と授業態度以外に関しては申し分のない生徒だ。
「留年の理由は……不登校、なのか。」
白鳥先生が、保健室登校をしていたから思い入れの深い生徒だ…と話していたが、何か深い事情があるのかもしれない。
……あとは、片井守。見た感じだと、かなりの勤勉家で、周りのクラスメイトは耳障り目障りな虫ケラ、とくらいに思っていそうな印象だ。
こういう奴は、変に誰かと無理矢理くっつけてやる必要もないが、医者を目指してんなら多少なりとも他人とコミュニケーションをとる必要がある。それを経験できんのはおそらく高校が最後だろう……。
「大学入っちまったら一人行動普通に出来ちまうもんなー…特に医学部なんて…なぁ。」
この2人をどうにかしてやれないか、と柄にもなく考えながら伸びをしていると、滅多に鳴ることのない内線が鳴って慌てて出た。
「はい、黒澤です。」
「すまない私だ。」
珍しく深刻そうな声で電話をかけてきたのはうちの校長だった。……面倒なことでなければいいのだが。
「どうかしましたか?」
「君のクラスの生徒が駅前のマイクドナルドで暴行被害にあったようで電話が入ったんだ。…柳原真尋くんと伺っているが。」
「柳原が!?……よ、容態は??」
「少し鼻血が出た程度のようで、一緒にいた片井守くんの自宅のクリニックで治療を済ませてくださったようだ。相手に危害も加えていないし、こちらは大した処置をしなくても良さそうだ。」
大きな怪我がなかったことと相手に手を出していないことを同時に知らされ、ほっとした俺は思わず椅子に深く座り込む。…こういったアクシデントも久しぶりすぎて心臓が止まるかと思った。
「警察が来ていてばたついてるようでね。あまり詳しい経緯がわからないから、明日の放課後2人と黒澤くんでマイクドナルドに話を聞きに行ってくれ。チーフの方が立ち会ってくれるそうだ。」
「……わかりましたー。」
「そんな面倒そうな返事をしないでおくれ……君にはとても期待しているんだ。」
「期待してほしいなんていつ頼みましたかねぇ……まぁ仕事ですし?行きますよ。」
「ありがとう。頼んだよ。」
期待されるほどの価値をこの人はどこから見出しているのだろうか。さっぱりわかんねぇ、と大きな独り言を呟きながら、煙草を咥えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 37