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-黒澤side32-
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「はぁ……なーにやってんだか俺は。」
白鳥先生から衝撃的な命令を受けて、そちらに気を取られ、業務はいつも通り行えた気がする。それを良いととるか悪いととるか。俺はやけに煩くカラフルなネオン街で、1人足取り重く歩いていた。こんなにも眩しかったっけなぁ……ああ、歳を感じる。
「あら、ちゃーんと来たのね?お利口さんじゃない。」
聞き覚えのある声に大きな溜息をつきながら振り返ると、俺は思わず声を失った。髪は長くパーマがかかっており、あるはずのない胸が強調されている。短いスカートから見える脚も綺麗で正直目のやり場に困る。リップで潤うその唇から聞こえる声は間違いなく男なのに、白鳥先生なのに、男っていうものは本当に単純に出来てるもんだな。
……悔しいが、こいつはそのへんの女より断然綺麗なのだ。絶対に口が裂けても言わねぇが。
「白鳥せ……」
「その名前やめてちょうだい。私はナオコよ。会うのは2回目かしら。久しぶりね?」
「……そ、っすね。」
7年前、1度この姿の白鳥先生に遭遇したことがある。玉置に出会うまでは相当の酒飲みで、このネオン街一帯は概ね足を運んだことがある。もちろん『スナック チェリー』のとんでもねぇ噂も知人から聞き、知っていた。
ある時、女装姿の白鳥先生と気づかず、スナックの前に立っているオカマに声をかけてしまった。
酷く酔っていた俺だが、その声を聴いてさーっと酒が引いたのを覚えてる。……まぁそれは当時の白鳥先生、いや……ナオコさんも同じだったようだが。
お互いがお互いにああ教師人生終わった、と思ったが、何も語らずとも二人の間で暗黙の了解となっていた。止まっていた7年の時が動き出したかのようだ。
「ナンパするだけナンパして、店に入るのを拒んだ上に化け物を見たような目で逃げていくんだから酷いわよね~?でもやっとこれで貴方を連れ出す口実ができたわ。」
「この辺網羅してりゃ、夜蜘蛛の事くらい知ってんすよ。……ここは拷問部屋同然だ……。」
「何よその言い草!!話聞かされるだけ聞かされたこっちの身にもなりなさいよ!!……その腐った根性、あの子達に叩き直してもらいなさい?それでもお酒が飲めるんだから感謝してほしいくらいよ!?」
奢ってくれるのか、と少し喜びそうになるとナオコさんはヒールで俺の足を踏みつけた。……ああもう既に心が折れそうだ。
「ただいま~ナオコのおかえりよ~!あなた達好みの餌、連れてきたわよ~ん」
「いやあああん!!!何よナオコ!!冴えない後輩ってこのナイスガイ!?最高じゃない~ちょっと早く座りなさいよ!ほらほらほらぁ!」
髪は短髪でゴリマッチョ……どっからどう見てもごつい男がバケモンみたいな濃い化粧をしているようにしか見えない。この人が、かの有名なママのチェリーさん。なんでも老若男女問わずこの人に逆らう人は居ないとか。……恐ろしい。
「へぇ~イッケメーン!ねぇねぇ今から僕と楽しいことしない?……結構僕上手いよ?」
今度は見た目も声も中性的な美青年が出てきたと思った……が前言撤回。間違いない、この人が公衆便所とも言われているババロアさんだ。黙ってりゃモデルにでもなれそうなルックスだが、出会って3秒で身の危険を感じ、距離を置いた。……やべぇ俺食われる。
「こらこらご新規さんにがっつかないでまずは自己紹介しましょうよ。……すみません、ナオコがいつもお世話になってます。エクレアです。よろしく。」
オカマという事は置いといて、ようやくまともな人が現れ、俺は胸をなでおろした。顔はどちらかといえば美形で髪も長髪だが、身長は俺ぐらいあるようだ。そしてとてつもなく声が低く、なんとも言えない気持ちになった。
とりあえず模範解答をしておこう。……ここにはいろんなタイプの化けも……オカマが揃っているようだ。
「ママ、ご新規さんなんて珍しいね。良かったじゃないですか。ナオコさんのお知り合いの方ですか。」
「……まぁ、そんなところです。貴方は?」
客席には眼鏡にスーツ姿の品行方正な男性が座っている。……まさかこんな真面目そうな人がオカマ!?
「私は衛と言います。僕もゲイセクシャルです。ここの常連客なんですが、チェリーママには本当にお世話になっていて……ここで相談とか懺悔、的なことをしてますね。」
「爽やかな笑顔で何いってんすか……。」
「まぁここでは赤裸々に話しましょう。チェリーママから情報が漏洩することはまず無いですから安心してください。」
どんな権力もってんだよ、と思いながら衛さんの隣のカウンター席へと腰掛けた。チェリーママの隣にはエクレアさん、ババロアさんがいて、どうやら店を手伝っているようだ。
「さーて、女優俳優揃ったわね?じゃあ、始めましょ~。」
それぞれグラスを持って乾杯をする。カン、とその音が店内に響き渡った。
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