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-黒澤side5-
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「クロちゃんっ、おはよーっ!」
いきなり飛びついてくるこの人のかわし方にもようやく慣れ始めてきた俺に、白鳥先生は不服そうに頬を膨らませている。我が物顔で俺の隣に座ってきたが、その席はまだ来ていない藤岡先生の席なので正直言って勘弁して欲しい。
「…おはようございます。白鳥先生は朝から元気ですね…。」
「へへーん。いつでもどこでも元気!これが若さの秘訣よ?」
…確かにこの外貌とテンションで俺よりも3歳も年上だなんて考えられない。まぁ俺は髭を生やしている分、実年齢より老けて見られるのは仕方が無いことだが、それを抜きにしても白鳥先生は若い。いつも女と男のエキスを吸い取ってるから~などと無気味な発言もしていたが、そこはあえて触れないでおくことにした。
「くんくん…。そう言えば最近タバコとお酒の臭いしないわね?減らしたの?」
「ああ。少し前に辞めました。」
「はっ?辞めた!?そんな簡単に辞められるもんなの?クロちゃんヘビースモーカーだったじゃない…。」
1日に2、3箱ほど吸うくらいにはヘビースモーカーだったが、案外すんなりと辞めることができたので自分でも正直な所驚いている。白鳥先生の驚愕の声に、ほかの先生も驚いた様子で俺の方を凝視した。彼女ができたのかとか、それで口が寂しくなくなったのかとか…野次馬のように聞かれてついつい大きな溜息をついてしまう。
「彼女なんているわけ無いでしょ…今は仕事が恋人なんで。生徒に辞めた方がいい、心配だって言われたから辞めた…それだけですよ。」
「…ふーん、クロちゃんってほんと生徒に対して熱いわね。見た目とのギャップ…いい!そういうとこ好きよっ!」
目をキラキラさせてクネクネ腰を揺らす白鳥先生に全員がげんなりとした表情でそそくさと自分の持ち場へと戻った。白鳥先生はその様子にご立腹のようだが…まぁこんな感じで職場の雰囲気もどちらかといえばいい方なので、正直最近仕事が楽しい。自分がこんなにも仕事人間だったとは考えもしなかったが、そのおかげで私生活も更生されているのはいい兆しだ。
「ああそう言えば、先日藤岡先生の教室で玉置に会ったんですが、どうも藤岡先生は外出していて、いつも放課後はいないみたいですよ。」
「あら、そうなの?なーんだ、やましい事でもしてるのかと思ったのに~。…っていうか居ないならなんで自分の部屋で描かせてるのかしら…。」
「た、確かに…。絵に集中させたいから、とか?」
「だとしたらかなりの贔屓よ?きっとほかにだってそうしたいと名乗り出る生徒がいるはずだわ。」
そう言われてみれば、個別指導と称しておきながら当の本人が居ないはおかしい気がする。それならば、美術室で他の生徒と平等に描かせればいいものを、何故にあそこまで玉置に固執するのだろうか…本当に謎だ。
「今日の放課後、玉置と二者面談があるので…それとなく聞いてみようと思います。」
「そうね…私も少し気になるわ。」
ご報告よろしくとウインクを一つして白衣に腕を通すと、白鳥先生は颯爽と職員室を後にした。…本当に忙しない人だが、ちゃんと生徒のことを見ているのは事実で、その点は見習いたい部分でもある。自分の生徒なのに、他人から指摘されるようじゃまだまだ洞察力が甘いのだなと痛感した。
出席簿を持って職員室を出ようとドアに手をかけたそのとき、タイミングよくドアが開いて藤岡先生が入ってきた。先程までこの人の噂をしていたものだから、あからさまにビクッと肩を震わせて声が上ずってしまった。…変に思われただろうか?
「藤岡先生…おはようございます。」
「ああ、ちょうど良かった。玉置くんに伝言お願いしてもいいかな?」
「…は、はい。」
「昼休憩に入ったらすぐ僕の部屋へ来るように言っといてくれ。それじゃ。」
相変わらずぶっきら棒な声色でそう言い捨てると、職員室には入らずに引き返して出て行った。…これだけを言いに、職員室に来たのか?そう思えば思うほど、ますます玉置との関係性が気になってきた。
俺らが気にしすぎなのかもしれねぇが、どうもあいつは弱弱しいオーラが漂っていて目が離せない。気も優しいやつだし、何かがあるのではないかとつい勘ぐってしまう。
…気のせいならそれでいい。思い切って一度、玉置に話を聞いてみることにした。
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