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-黒澤side7-
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「…で?クロちゃんはドアの前で何をやってんの。」
「ひっ…!?な、なんだ白鳥先生か…おどかさないでくださいよ。」
「なんだ!じゃないわよ…ドアの隙間覗いたり耳当てたり、不審者極まりないわよ…。」
昼休憩に入り、玉置が藤岡先生の部屋に入っていくのを確認すると、俺はついつい気になって後を追ってしまった。勿論の事ながら、部屋の鍵は閉まっていて覗き見どころか会話さえ聞き取ることが出来ない。…ていうかあなた様だけには不審者扱いされたくないんですが。
「…た、玉置のことが気になってつい。」
「まぁ…分からなくはないけどっ。クロちゃんもクロちゃんで玉置くんのこと贔屓しすぎよー?いいなぁ私もチヤホヤされたいっ!」
そう言った矢先、発言とは裏腹に一緒に耳を当て始める白鳥先生を見て、自分がどれだけ不審だったかをこの目で確認することができた。…ああ、これはひどい。
「…あれ、なんかちょっとだけ喋ってるの聞こえない?」
口元に手を当ててコソコソ話で乗り気な白鳥先生に先程までの発言はなんだったのか問いただしたかったが、同じように耳を当てて息を呑んだ。
「玉置くん、ここはもっと開放感を演出して…。」
「…はい。こう、ですか?」
「そうそう、そんな感じ。あと君の絵は真面目すぎる。もっと個性を出さないとこの世界は通用しないんだよ。」
中から聞こえてきたのは、なんとも真面目な絵の話だった。藤岡先生も玉置もいたって真面目な声色で絵に向き合っているようで、思わず安堵のため息が漏れた。白鳥先生はつまらなさそうな表情をしているが、俺は心のモヤモヤが少し晴れたような気がした。
「んー…特に収穫なしね。」
「やっぱり俺らの思い過ごしだったのかも知れませんね…。」
あのとき表情を曇らせていたのは、絵について厳しく藤岡先生から指摘されることに怯えていたのかもしれない。…だがそれは部活に入っていれば当たり前のことなので、なんとか乗り切って欲しいところだ。
「藤岡先生には悪いことをしましたね…悪者扱いをしてしまって。」
「まぁそう取られて当然じゃない?部屋は立ち入り禁止であの寡黙っぷりよ?どっからどう見ても怪しすぎるんだもの…。」
謎めいた人は好きだけど、あそこまで寡黙だと取っ付きにくいわ…なんて、また自分の男性のタイプを話始めたので、軽くあしらって藤岡先生の部屋から離れた。
「あーっ白鳥先生!!全く貴方って人は…なんで保健室でじっとしてられないんです!!こんなところで油売ってないで さっさと仕事してください!!」
「げーっ校長先生サマ…。」
廊下中に響きわたる校長の怒鳴り声に、白鳥先生はキャーと気持ち悪い奇声をあげながら白衣を揺らして走り去ってしまった。あそこまで落ち着きのない28歳もそうそう見られないなと、呆れよりも最近は感心してしまう。校長は大きくため息をついて俺の方にも振り向いたので、足早に俺もその場から立ち去った。
「あー…玉置、へこんでねぇえかなぁ。」
男なんだから、このくらいのことでめげてちゃこのさき生きてけねぇが、自分が積み上げてきたものを全否定されるのはいくら男でも傷つくものは傷つく。俺も親父に教師になることを反対されたときは本当に悔しかったし、試してもないことを頭ごなしに無理だろうと言われるのは本当に腹が立った。俺は殴り合いの喧嘩でもなんでもして反発するタイプだったが、玉置の性格ではそうはいかないだろう。
他の生徒のようになんでも相談してくれて、心を開いてくれるような存在でありたい。そう思うのは教師のエゴだろうか…。いや、教師というよりも俺自身のエゴかもしれない。現に玉置のことはクラスメイトの誰よりも気になっているし、もっと親密な関係になりたいとも思っている。
根本からして俺は人から頼られることが好きなため、どうしてもそれを人に押し付けてしまうところがある。それで玉置に嫌われるようなことがないように、今後は程よい距離感で玉置の事を知っていこうと心に誓った。特に今回のような早とちりをしないように…。
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