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-黒澤side17-
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「おはよーごぜーまー・・・。」
フラフラと職員室に入ると、他の教員達がお化けでも見るような目で俺を凝視した。・・・やべぇ、視線が痛い。
「ちょっ・・・クロちゃん!?なんて顔してんのよ・・・!髪はぼっさぼさだしネクタイ結べてないし!もーやだぁ・・・こっち来なさい!」
徹夜明けのせいか、やけに眩しく感じる白鳥先生が曲がった俺のネクタイを慌てて直しに来ると、周りの先生は新婚夫婦だの何だのと喋りながらクスクス笑っている。
過度の寝不足で否定する気力すらなく、白鳥先生は意味深な笑みを見せているが、もうどうにでもしてくれと身を任せていた。
「なぁに~やけに素直じゃない?二日酔い?」
「酒なんて飲んでないっすよ・・・ちょっと調べもんを・・・。」
結局あれから藤岡先生のことを朝まで調べていた。あまり不信感を抱かせないように、初めは基礎知識として作品について調べていたのだが、少々気になる記事があったのだ。
それは、藤岡先生の緑内障疑惑・・・という記事だ。あくまでインターネットでの情報のため信憑性は低いが、二年ほど前から作風が変わってきており、病気が関係しているのではないか・・・といった内容だった。
常に眼鏡をかけており、仕事をしていても遠くを見るときは目を細めていることが多いため、視力が悪いのは確かだが、それが本当だとすれば進行性の疾患のため、絵に支障が出てこないのだろうかと考えていた。
・・・とまぁそんな感じで、今に至る。
「何急に気合入ってんのよ・・・中間テストの採点も終わってなかったんじゃないのー?」
「それはちょっと前に死ぬ気でやりましたよ・・・。あーやばい気ぃ抜いたら寝る・・・確実に落ちる・・・。」
栄養ドリンクを飲みながら席に着くと、隣から解答用紙の入った茶封筒を覗いてきた。
「で、数学の平均点は?」
「うちのクラスは優秀っすよ?72点です。」
それを聞いていたほかの先生や校長先生がおおお!と嬉しそうに目を輝かせて拍手喝采。
「クロちゃんのクラスは皆優秀だからね~!安泰安泰!」
「俺の教え方が上手いんっすよ。」
「あら、偉そうな口きくようになったわね?まぁそれぐらいでなきゃやってけないけどね。」
今日は見た目最悪だけど、と白鳥先生は俺の額を人差し指で軽く押した。
「もうすぐ夏休みで受験モード突入なんだから、クロちゃんもあんまり無理しすぎちゃダメよ?」
「仕事に支障は絶対出さないようにしますよ。今日は志望校アンケートと面談もありますからね・・・気合で乗り切ります。」
高校3年生の夏は、人生のターニングポイントに成りかねない。中間テストの結果と学校に寄せられた大学や専門学校のパンフレットを大量に抱えて、教室へ向かおうと席を立った。
「あっクロちゃん!これ、忘れ物。」
そう言って手渡してくれたのは、玉置との交換ノートだった。
「あれ・・・あいついつ俺の机に・・・。」
「今日の朝から机の上にあったわよ?直接渡せばいいのにねぇ?」
ササッと最後のページを開くと、
“もうすぐ絵のコンクールがあり、忙しくなります。交換ノートはお返します。ごめんなさい。”とだけ記入されていた。
・・・とうとう、唯一のコミュニケーションツールまでも突き返されてしまった。
「・・・そんなに俺と話したくないのかよ。」
「クロちゃんなんか言った?」
「いえ・・・ホームルーム行ってきます。」
藤岡先生のことも、何か事情があって話せないのはよく分かる。だが何の理由もなしに、遠まわしに突き放されてしまっては、向こうに悪気がなかったとしても
気持ちのいいものではない。
俺は玉置のためと思い向き合ってきたつもりだが、ありがた迷惑だった可能性もある。それなら、これ以上詮索されるのは嫌だとはっきり言って欲しい。
「馬鹿みたいに徹夜して、嫌がらせてたら元も子もないもんな・・・。」
・・・今までそれを聞くのを恐れていた自分も悪い。今日はその事も含めて、面と向かって話し合おう。
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