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-黒澤side19-
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「玉置、入っていいぞー。」
変なドキドキを抑えて生徒指導室から顔をのぞかせると、玉置は参考書を持って廊下で待機していた。その本にはマーカーがたくさん引かれていて、勉強も怠っていないことがよくわかる。
「・・・失礼します。」
玉置も俺と同じように硬い表情で俯きながら部屋に入ると、静かに席へと座った。そして無言。
・・・すっげぇ、気まずい。
「あの、さ?交換ノート、ごめんな。・・・こういうの本当は鬱陶しかったか?」
「えっ・・・そうじゃないです!!そう・・・じゃなくて・・・その・・・。」
慌てて否定はするものの、交換日記を終わらせたいことに変わりはない様子だ。
「玉置は優しすぎんだよ。・・・藤岡先生とのこと、もうこれ以上探られんのが嫌なんだろ?・・・お前のためと思ってやってたが、逆に困らせちまったな。すまなかった。」
「おんちゃん先生・・・そんな、謝らないでください。謝らないといけないのは僕の方なのに・・・。」
俯いたままぎゅっと目をつぶって、玉置は小さく“ごめんなさい”と呟いた。
「お前が謝ることなんてひとつもねーよ。・・・お節介ですまなかった。ただ、お前があまりにも自分のこと話さねぇから心配でな。それだけはわかってほしい。」
「おんちゃん先生の気持ちを裏切るようなことをしているのは重々わかってます。・・・でも僕は、本当に大丈夫ですから。」
「大丈夫、って顔してねぇから言ってんだけどな・・・俺は。」
拒まれる覚悟で柔らかい髪にそっと手を伸ばすと、顔を赤くして何も言わなかった。・・・2人きりだとこうして身を委ねてくれるのにな。
「・・・ひとりで抱え込むなよ。俺はお前の担任なんだ。いつか頼ってくれるのを待ってるから。な?」
「ありがとうございます。あの、進路の話は・・・。」
「問題なし。以上だ。」
「えっ!?」
「今のお前なら大丈夫だろう。・・・但し無理は禁物な。しっかり食って寝ること。それが課題だな。」
白い肌にはあまりにも目立ってしまう目の下のクマ。もうすぐ絵のコンクールがあると他の学生が言っていたが、玉置は人一倍放課後も絵に時間を費やしているため、おそらく家では勉強をしてあまり寝ていないのだろう。
「・・・おんちゃん先生は、全部お見通しですね。凄いなぁ。」
「案外そうでもねぇよ?」
久しぶりにいつもの困った顔で微笑む玉置を見られて、ほっとした。
・・・いつもこうして笑っていられるようにしてやりたい。もっと他人に心を開いて欲しい。
その想いがこの手から伝わるようにと心で祈りながら、いつもより優しく玉置の頭を撫でた。
・・・後日、玉置の笑みの裏側に隠された、とんでもない事実が発覚するとは知らずに。
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