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-黒澤side25-
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あの後、ローカル放送では藤岡先生の話題で持ち切りとなり、藤岡先生は記者会見の生放送にて視聴者に謝罪した。玉置の希望で、代わりに描かせていた生徒の名前については記者会見で言及しなかったが、同じ学校の者やコアなファンの間では玉置が描いたという事は知れ渡っていた。
無事退院が決まった玉置の元に行くと、念のために証拠としてとっていたICレコーダーを嬉しそうに握りしめている玉置とニヤつく白鳥先生がいた。
「白鳥先生……なんであんたがそのICレコーダー持ってんすか……。」
「だってぇクロちゃん捨てるっていうんだもの~勿体ない!超超かっこよかったじゃない?なんか刑事ドラマみたいで、私惚れちゃいそうになったわ~。」
抱いて~と甲高く叫ぶ白鳥先生を手に持っていた新聞で思いっ切りぶん殴ると、嘘泣きを始めたので無視をした。
「お前も嬉しそうに聞いてんじゃねーよ、馬鹿っ。」
「あっ…おんちゃん先生ごめんなさい……でも、本当にありがとうございました。凄く……凄くかっこよかったです。」
「そ、そんな欲しいなら…やるよ。俺の暑苦しい怒鳴り声しか入ってねぇけどな。」
コクコクと頷くと、顔を真っ赤にさせてICレコーダーを握りしめたまま俯くもんだから、何だか俺まで恥ずかしくなってきた。
「はあああもう見てらんないわ!……いちゃいちゃすんのも大概にしなさいよー?あなた達はあくまで教師と生徒なんだからね?自重しなさい?それじゃ、私はおいとまするわね~。」
「ばっ……俺らはそんなじゃ……!」
ハイハイと軽くあしらって白鳥先生は去っていった。…あの白鳥先生に呆れられる俺ってどうなの。
相変わらず嬉しそうに微笑む玉置の方に向き直って頭を撫でてやると、何かの糸がプツンと切れたかのように、たちまち玉置の目から大粒の涙が溢れた。
「た、玉置!?」
「おんちゃ、せん…せ…っ、本当に、本当にありがとうございました。僕っ…僕本当に、今までずっと辛くて、でも絵は嫌いになれなくて、それでっ……。」
嗚咽でうまく喋れない玉置をぎゅっと抱きしめると、後ろに回した手にぎゅっと力が込められた。華奢な身体からは想像出来ないほどの力で抱きしめられ、求められる幸福感で胸がいっぱいだ。
「やっと、自由に絵をかけるな?俺も嬉しいよ。…心から嬉しそうに笑ってる顔も見れて、嬉しい。」
そう言うと、さっきまでの空気とは一変して、玉置は何故か言葉をつまらせて俯いてしまった。慌てて顔を覗き込むと、何やら深刻そうな表情をしている。
「どうした?また具合悪くなったか…?」
「おんちゃん先生、あのっ、僕。」
「ん?……どうした?」
「もう、気持ち悪いって言われてもいい。もう僕は僕に、おんちゃん先生に嘘をつきたくない。あのっ!!僕、僕……初めて会った時からずっと、おんちゃん先生の事が…す…。」
「……たま、き」
そこまで言いかけると、ドアの前から騒がしいガキの声が聞こえてきて、互いにピタリと動きが止まった。
「みずき~なにしてんだよ、はいろうぜ」
「いやっでもなんかしんこくそうなはなしごえが…」
「おれにはなんもきこえねー。せっかくここまでついてきてやったのになんだよ~そんなならかえんぞー?」
「まっ……まってよりょうちゃん!」
「……あははっ、えっと……おんちゃん先生ごめんなさい。」
その声に玉置は苦笑いをして、ドアの方へと向かった。
…おい…今のって完全に……そうだよな??
絶対に……そうだよな??
寸止め状態の俺は暴れる心臓を押さえながら、ガキ相手に本気で睨んでしまった。
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