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思い馳せ
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バリケードの中に入って、昨日と同じく椅子に座る。
晴くんはなんだかソワソワしているみたい。
朝のことが気になってるんだろう。
「はいっ、これ…
お気に召すかはわかりませんが…」
ちょっと照れながら渡すと、晴くんは
「…さんきゅ。開けていい?」
と言ってきた。
「もちろん!」
開かれるお弁当。
反応をどきどきしながら伺う。
いつまで経っても晴くんは何も言わない。
なんでだろう…
まずそう、かな?苦手なものが入ってたとか?
不安ばかりが頭をよぎる。
「あっ、あの…、嫌いなものとかあったら、残していいから!
あとっ!まずかったら!遠慮なく言ってね!!
ぇと、あの、もしかして、食べる気も起きない…?」
「………すげぇ」
「へ?」
「超すげえ…。お前って料理得意なのな。
めちゃくちゃうまそうじゃねえか」
どれから食べよう、なんて真剣に悩んでる晴くんを見て、心の中に安堵が広がる。
「よ、よかったあ…っ
味付けが口に合うかはまだわかんないから、その、あんま期待しないでね…?」
「どうせうまいよ」
ぱくっ、と大根のきんぴらを口にして
「やっぱり。てか遥かに予想以上だわ」
と咀嚼する。
あまりにうまいうまい言いながら食べるものだから、恥ずかしくなってきちゃった。
「そ、そうかな…?よかった、けど…
そこまで言うほど特別なものは入ってないと思うよ…?」
「いや、」
「?」
「俺のためにつくってくれたってのが、まず最高…。ほんと、ありがとな。
わざわざつくってきてくれて。」
「大丈夫だよ!家族の分も作ったからついでみたいなもので、そんなに手間でもないし…」
そう言うと、晴くんは何故だかちょっぴり悲しそうな顔をした。
僕、何か晴くんを傷つけるようなこと言ったのかな?
どうしよう…
「ついで、か…、そうだよな」
晴くんが小さく呟いた。
「あ!でも…ずっと、きみに思いを馳せながらつくったよ!」
何をつくれば喜んでくれるのかな、とか。
どんな味が好みなんだろう、とか。
晴くんのことを考えながらつくるのは、とても楽しかった。
少し恥ずかしくなって僕が下を向いて照れ笑いすると、晴くんはガリガリと頭をかいた。
クセ、なのかな?
「あー…もう…。
ほんと、ありがとう。」
嬉しそうに笑う晴くんの笑顔は、やっぱり冬の晴れた日みたいに眩しい。
僕、晴くんの笑顔、好きだなあ…
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