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訪問
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コンコン、と音がして、2人してその音の方角を見つめる。
あれ…?
晴くん、ここには誰も来ないって言ってなかったっけ……
不思議に思って晴くんを見ると、晴くんは少し険しい目をしていた。
「…誰だ」
晴くんが声を張って聞くと、
「…北村です」
という返事。
僕は驚いて息を飲み、晴くんはいっそう険しい顔をして立ち上がり、バリケードを越えて扉を開ける。
バリケード越しで、僕から北村さんは少しだけしか見えなかった。
「…何しに来た」
「晴、そんな険しい顔しないでよ。
…私、奏里に用事があって来たの。
こっちに来るのを見たって人がいたから、もしかしてと思って追って来たのよ」
「え、僕に?」
北村さんが僕に何の用事だろう。
嫌われてると思ってたのに、わざわざ訪ねてくるなんて…
「何の用事だ。さっさと言え」
「晴こわいわよ。
できれば2人で話したいから、奏里をお借りしてもいいかしら」
「だめだ。この場で済ませろ」
晴くんが怖い口調で詰め寄るのを飄々と受け流しながら、北村さんは僕に呼びかけた。
「ねえ、良いでしょう?奏里。
朝のこと、改めて謝りたいのよ。
千夏の言うとおり、私の口調もきつかったかと思い直したから。
それから、2人で話したいこともあるの」
そう言われて、ハッとした。
僕も、北村さんに謝ってない。
ホームルームに間に合わなさそうな僕を心配してくれた北村さんに、僕は大っきな声を出して反抗してしまったんだ。
なんで忘れてたんだろう!
「ダメだ。俺が見てるとこで話せ」
僕はバリケードを越えて、とにかく北村さんを拒否しようとする晴くんを押しのけた。
「おい?」
「ぼ、私も、改めて謝らなきゃ。謝らせて?」
「ダメだ!!!」
「あら、本人が言ってるんだから良いじゃない。
行きましょ」
「あ、お弁当そのままそこに置いておいて!
後で取りに来るから」
「ダメだって…!」
晴くんが僕の腕を掴もうとして、でもその手は空を切った。
北村さんが僕の腕を晴くんより先に引っ張ったからだ。
「おい!!」
北村さんは、驚くような行動に出た。
バリケードを思い切り蹴飛ばしたのだ。
ガシャガシャガシャン!と大きな音がして、バリケードが崩れ落ちる。
北村さんは綺麗に避け、僕には北村さんに引っ張られて当たらなかった。
でも、晴くんは後ろから倒れてくるバリケードを避けることができず、下敷きになる。
「晴くんっっ!!!!!!!!」
世界がスローモーションのように見えて、僕は晴くんに手を伸ばした、が。
「来なさい!」
未だ掴まれたままの反対側の僕のうでが引っ張られ、僕と北村さんは走り出した。
晴くんに、手が、届かない。
「晴くん、晴くん!!!!」
「くっそ…!
奏太!!!!!!!!」
僕は精一杯抵抗して晴くんに駆け寄ろうとしたけど、北村さんの強すぎる力には敵わなかった。
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