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「ってことがあったんだよね」
学校から帰宅して寮に戻ると、高槻から昇平とその恋人、ダブルデートの話を一気に聞かされ、俺は少なからず混乱していた。
「え、あぁ…そう、なんだ…?」
「まぁ尊くんが混乱するのも分かる。俺も聞いたとき混乱したもん」
「だ、だよな…」
昇平の恋人らしい『矢巾』という男。名前は聞いたことがあるが、どうにも顔が思い出せない。
確かに、昇平は男前な方だし、明るくて性格もいい。だが同性が好きな素振りなんて全く無く、それこそ俺にグラビア雑誌を見せてきたり、通りすがりの女子を見て「はわ、豊満おっぱい…」などど呟く男だ。なのにそんな昇平が男と付き合うなんて。昇平は『矢巾』のどこに惚れたんだろうか、と気になった。顔が女みたいに可愛いのだろうか。
「んでね!ダブルデートの話なんだけど…」
「別に俺はどっちでも」
「そ、そっか!」
「まあ…昇平がデート中どんな感じになってんのかは気になるかな」
俺がそう言うと高槻は興奮気味に『だよねだよね!!』と返してきた。高槻的には昇平が恋人にデレデレしているところや頭が上がらない様子が見たくてたまらないらしい。想像したら俺も可笑しくなって、昇平には悪いが2人で笑った。
「じゃあ昇平にOKって伝えておくね」
「ん。あ、でも、俺『矢巾』って奴のことよく知らねーし、大丈夫か?」
高槻と付き合うようになって、こいつの周りとつるんで友達が増えて忘れかけていたが、俺はこの学校では不良なんてレッテルが貼られている。俺が相手を知らないってことは、相手も俺を知らない。自分の名前だけが先行した根も葉もない悪い噂を相手が知っている可能性がある。その場合、昇平にも、『矢巾』にも、迷惑をかけてしまうんじゃないかと心配になった。
「その辺は昇平に任せておけば平気だよ。大丈夫。」
そう言って高槻は優しく俺の頭を撫でる。
高槻の俺を見るその目はいつも優しくて、俺のことが愛しいという感情が漏れ出していて、なんだか目が合うと恥ずかしくなってしまう。心臓のあたりがギュっとして、ずっと見られていたいような、やめてほしいような、そんな気持ちにさせられるのだ。
俺はこくりと頷いて、俺を撫でる手にそっと頬を擦り付けた。
ダブルデートの日程が決まった。
来週の日曜日、場所はネズミーランド。
日曜日に遊園地って人混みすごそうだな…と行く前からげっそりしてしまうが、高槻も昇平も楽しみにしている様子なので黙っておくことにする。
「なあ尊、日曜の前に矢巾に会っとくか?」
昼休み、高槻から俺の不安を聞いていた昇平からそんな提案をされた。だが、もし俺を怖がっている相手で、デート前に俺に会ったことが原因でデートが無しなんてことにはなりたくなくて遠慮しておいた。当日になれば否応なしに参加しやければならないし、遊園地ならあの空間の雰囲気に流されて俺が居ても平気だろうと思ったのだ。
「そっか!」と昇平は笑って、「楽しみだな」と俺に微笑みかける。
『楽しみ』…ああ俺、楽しみにしてるのか。日程が決まってからなんだかソワソワして、当日のことを色々考えたり、何に乗って食べてなんて考えていたが、俺は相当このダブルデートを『楽しみ』にしていたらしい。長く一緒に出かけたり遊んだりする友達がいなかったから、この感情の名前がわからなくて気が付いていなかった。
「俺も、すっげぇ楽しみ」
そう答えた俺に、一瞬驚いた顔をしたが、昇平はまたいつものあの笑顔に戻ってわしゃわしゃ両手で俺の頭をかき混ぜた。
「わ、ちょ、なにすんだよ!」
「尊かわいーなと思ってさ!」
「あーもー!やめろ!」
昇平はゲラゲラ笑いながら人を犬を撫でるみたいにしてくる。だんだん俺も楽しくなってきて、同じように昇平のセットされた髪をぐっしゃぐしゃにしてやった。
2人でじゃれ合っていたら、ちょうど高槻が購買から帰ってきて、「あーー!浮気現場発見!浮気現場発見!」などと騒ぎ始めた。
「尊、うぜぇ奴が来た」
「だな」
「お前も俺と付き合おうよ、大事にするよ」
「昇平…俺を一番にしてくれる?」
「ストーーーップ!ストップストップ!!はい!そこまで!!」
暴れだした高槻をうるせーと笑っていたら昼休みが終わる予鈴が鳴った。俺は自分の教室に戻るため、昇平と高槻にじゃあ、と言って借りていた席を立った。
次の授業はなんだったかと考えながら教室へと向かっていると、前からガタイのいい顔の整った男が歩いてきた。坊主だし、日焼け具合から見て野球部だろう。
「(へぇ、野球部にあんな奴いたんだ)」
「矢巾!これ、忘れてるよ〜!」
「(矢巾?)」
聞き覚えのある名前に振り返ると、矢巾と呼ばれたイケメンは爽やかな笑顔で友人らしき男からノートを受け取っていた。
やはば…矢巾……………矢巾!?!?
矢巾って昇平の彼氏の名前じゃんか!
いや、そんな…あのイケメンが昇平の…?あいつが昇平を好きなのか…?
いかにも女にモテそうな顔である。まさかな…名前が一緒の別人だろ、と思いつつ、本鈴が聴こえた俺は急いで教室へと向かった。
俺を見つめるそいつの視線に気がつくことも無く。
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