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正真3
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友と鈴子と俺はほぼ毎日一緒に登校して、帰る時間が合えば、一緒に下校した。
ある日、友と鈴子が『帰ろ!』と俺の教室までやってきた。
今までも何度かあったが、その日は特別だった。
友が誕生日だったのだ。
俺が席を立って帰ろうとすると、1人の女の子が友に話しかけた。
「友くん、今日誕生日なんでしょ?誕生日会しよーよ!」
「うーん、でも、もう家でケーキ準備してあると思うなぁ」
「じゃあ友くんのお家にみんなで行ってもいい?パーティしようよ!」
「でも…急に大勢来ても、お母さん困るし…」
「そっか、そうだよね…じゃあみんなで一緒に帰ろうよ!それならいいでしょ?」
「えっ………と、」
友が口ごもると、女の子たちはせっせと帰る準備をして、『帰ろ!』とニコニコやってきた。
そして、俺に気がつくと、途端に冷めた目をして言う。
「前から思ってたんだけど、たける君はなんで友くんと一緒にいるの?似合ってないよ」
『似合ってない』という言葉に知らぬうちに大きなショックを受けて、似合うってなんだ、似合わないと一緒に居たらだめなのかと混乱した。
「なんかいいなよ!いっつも友くんと一緒にいて、邪魔なの!1人で帰ってよ!」
1人の子が言い出すと、我も我もと他の子たちも同じこと繰り返す。
俺が一緒にいたくて、いるわけじゃないのに。友が俺のところに来てるのに。なにも知らないくせに。
と思ったが、反論することが面倒で、かつ、拗らせたくないと思って、俺は黙ってその場を去ろうと重たい足を動かした。
「うるせぇよ、お前らが邪魔なんだよ!尊に謝れ!」
怒鳴り声に驚いて、振り返ると、友が観たことのない形相で女の子たちを睨んでいた。
女の子たちも驚いた様子で、涙目になっている子さえいた。
「なんで俺がお前らと帰らなくちゃいけないんだよ、俺は尊と帰りたいから帰ってんの!」
「ちょ、友…も、いいから…」
怒鳴り続ける友にそう言うと、俺は鈴子に目で『黙ってて』と告げられた。
友にも口から『たぁは黙って』と言われて、いつもと違う友たちに、俺は従うしかなかった。
「だいたいさ、似合わないって何?お前らなら俺に似合うと思ってんの?尊の何を知ってて言ってるの?何も知らねえくせに、うぜぇんだよ!」
「ご、ごめんなさ…………」
「俺に二度と話しかけんな。俺じゃなくて、さっさと尊に謝れ!」
怯えきった女の子たちの視線が一気に俺に向けられる。
「ごめんなさい」
何に謝罪しているのか、よく分かってないようなこの子たちの台詞だったが、もやもやしていたのがちょっと晴れたような気がした。
バタバタとすぐにその場を去っていった女の子たちの後ろ姿に、友はあっかんべーをしてから、さっきの顔からは想像もつかないような綺麗な笑顔で俺に向き直っていった。
「帰ろっか!」
「……うん」
初めて、友たちの俺に対する気持ちを知った。具体的に言われたわけじゃないけど、大事にされてるんだと思えて、嬉しかった。
「ケーキね、たぁの好きなチョコケーキだよ!」
「なんで?友、いちごいっぱいのやつ、好きだろ?」
「だってぇ、たぁが喜んでるの見たいもん!」
「えー、なんだそれ」
「3人でパーティしようね!」
その日は久しぶりに3人で手を繋いで帰った。楽しかった、幸せだった。ずっとこうしていたいってその時は思っていた。
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