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正真5
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目が覚めた。
ここはどこだろう。
真っ白な部屋。
あぁ、俺は、本当に死んだのかな。
薬の匂いがツンと鼻を突いた。
「……尊!」
「ゅ、ぅ…?」
友が隣に座っていた。
ここは、どこだろう。
俺はまだ死んだわけではないようだ。
「待ってて、看護師さん呼んでくる!」
「ぁ、ぇ…ぅん。」
身体が動かせることに気づいて、起き上がろうとモーションをかけた。
途端、全身が悲鳴を上げた。
痛い。
俺は、まだ生きてる。
しばらくして、友が看護師を連れて帰ってきた。
看護師からいろいろな質問と軽い検査をされて、その後、俺は3日間眠り続けていたことを知らされた。
「良かった、もう、目、覚めないかと思った……良かった…」
友が俺の手を握って言う。
友の手は震えていて、声は涙ぐんでいた。
だが、何かが俺の心に引っかかって、それが何かは分からないけど、俺は友の言葉に素直に喜ぶことが出来なかった。
次の日から警察の人が毎日やってきて俺に質問をした。
両親が殺されたこと、犯人が叔父さんだったこと、逮捕されて今は判決待ちなこと。
いろいろ聞かされた。
事件があった日、叔父から両親に電話があり、『大事な話が有る。』と連絡があったらしい。母は帰りの新幹線の時間を早め、父は仕事を置いて帰ってきた。
そして事件が起こった。
そんなことを知らない俺は普通に学校から帰宅。現場に鉢合わせ、というわけだった。
叔父は『金に困っていた。』
それしか言わないらしかった。
ほぼ絶縁状態だった叔父からの連絡で両親はそうとう重大な話だと焦ったのだと思う。
どんな会話が3人の中で行われたのかは分からない。
けれどうちには生活できるぎりぎりの金しかなかったことは確かだった。
2週間経って、俺は学校に復帰した。
いろんな人から『可哀想に』と言われた。
俺は気持ちが悪かった。
なぜみんなそんなことを言うのか。
どうして思ってないことばかり口にするのか。
あいつらが信じられない。
なにもかも嘘に見える。
そんな目で、俺を見るな。
そうか、友と話した時のわだかまりはこれだったのか…。
気づけば俺は『人間不信』に陥っていた。
喋らない、笑わない、怒らない、悲しまない、喜ばない。
俺から表情が消えて、言葉も消えた。
小学校時代、必死で友と鈴子が俺を助けてくれた。
周りからは『まるでロボットだ』と言われた。
仕方がなかった。俺はもう辛い思いはしたくなかったから。
このときの俺はまだ知らなかった。
誰が俺を助けてくれたのか。
両親が叔父に襲われていた時間に、
俺の家の前を通りかかった小学生が『人の叫び声がする』と通報してくれたらしいのだが。
それが未だに誰かは分からない。
おかげで俺が刺される直前にパトカーが到着して、現行犯で叔父は逮捕された。
そのパトカーの音を聞いて、友と鈴子がすぐに駆けつけてくれて、俺が目覚めるまでずっと病院にいてくれたらしい。
そのくせに人間不信になって友たちのことも信じられなくなってたとか、俺だいぶメンタル傷ついてたんだねって感じだ。そりゃそうだろうけど。
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