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愉快な仲間たち 1
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映画の撮影も順調に進み、歌の方も相変わらず鬼指導を受けている。
¨こいのうた¨をまだ歌ったことはない。
まだ早い!とのお達しがあり、今はひたすらトレーニングだ。
母音を同じように響かせる練習や、発声技術の練習。
声を共鳴させる練習や、呼吸の仕方、息つぎ…など。
ただ毎日時間があれば音源を聴き、歌詞を見ていた。
そして今日は久々の完全オフ日。
完全に1日オフなのは、これから先映画の撮影が終わるまではないらしい。
なので奏と、指導でも何でも長い時間過ごせる、嬉しくと思っていた。
んだけど、二人きりとはいかないようだった。
「篤、今日はレッスン無し。昼から来客あるんだ。来客っても高校の奴だけど」
朝食のパンをかじりながら、奏が嬉しそうに言う。
「高校の友達?」
「そうそ。3ヶ月ぐらい海外に行ってたから、久々に会うんだよ。
お前にも紹介してやる」
二人きりじゃないのは少し残念だが、奏の友達に紹介してもらえるのは、嬉しい。
奏のテリトリーに入れたように感じるし、まだ俺の知らない奏を知ることが出来るからだ。
「あ、じゃあ高遠さんとか社長も来るの?」
高遠さんと社長も同級生だし。
「肇は来るっつってたけど、葵は行けたら行くってさ。ってか、来るだろ。
仕事サボってでも」
「サボって…社長ならありえる」
否定できないとこが悲しい。
「俺朝からツマミとか色々作るから、指導してやれねーんだわ。わりーな。
昼まで自由にしてていいぞ」
「手伝うよ。やることないし」
朝は二人きりなんだ。
一緒にいたいしね。
手伝うと言った俺に、奏はふんわり優しく笑う。
「んー、じゃあ頼む」
「うん」
10時半頃、ネットで頼んでいたのか、宅配で色んな食材が届けられた。
それらをキッチンに運び、メニューを聞く。
「あいつらビールもワインもカクテルも焼酎も日本酒も何でも飲むからさ。
ある食材で適当に作ってって。とりあえず篤は洋風のもんな」
そう言われて作ったのは、シーザーサラダ、カナッペ、サーモンのマリネ、ササミのチーズ焼き。
「おぉ、うまそうじゃん」
出来た料理を見て、奏が笑う。
奏が作ったものは、だし巻き卵に、オクラと山芋の梅肉和え、白菜の浅漬け、手羽先のから揚げ、冷や奴。
「奏のもうまそう…。和洋折衷なツマミだね」
並べられた料理を見る。うん、なんか居酒屋みたいだ。
「お酒は?」
「来る奴が適当に持ち寄り。
いつも俺んちに集まるからさ、俺はツマミ担当、他は酒担当になってんだよ」
「へぇ~」
そう話していたら、ピンポンとインターホンが鳴った。
と、それに続いて奏の携帯が鳴り始める。
「わり。篤出て」
玄関を指差し、電話に出る奏。
俺は頷き、玄関へ向かった。
高遠さんや社長なら勝手に入ってくるし、インターホン鳴らすってことは、奏が言ってた友達の人かな?
少し緊張しつつ、俺はドアを開けた。
そこに居たのは──。
光を浴びて輝く銀髪、ビー玉みたいなミドリの目。
真っ白い肌は透き通るような、奏とはまた違ったタイプの、とてつもなく目を惹かれる人間。
思わずじっと見てしまう。
目の前の人物も、目をぱちくりさせていた。
だけどすぐにその人はふっと笑い、口を開く。
おぉー笑顔がまぶしい。
「…とりあえず、中に入れてくんない?」
「え、あ、あぁっすいません…どうぞ」
ドアを全開にして、中へと促す。
「どーも、お邪魔しまーす」
靴を脱ぎ、スタスタとリビングへと歩いていく後ろ姿を見る。
「…男…だよな、うん」
一人頷き、俺もリビングへと向かう。
リビングのドアを開けると、笑い合う二人がいた。
「あ、篤。紹介する。
こいつは白川聖夜。高校の同級生な」
「どーも。」
「あ、日野篤です」
ペコッと頭を下げると、クスっと笑う声が耳に届いた。
「知ってる」
「え?」
首を傾げると、意味ありげに笑う白川さん。
「せーいーや。」
ジロリと睨みながら奏が白川さんをつつく。
「ハハっ。モデルしてんだろ?見たことあるよ。
それに奏が今度楽曲を提供するってメールきたから。今住み込ませて、指導してるってことも」
「そうですか…」
何だろ…?
うーん、なんか疎外感…?
「聖夜は座ってろ。篤、運ぶの手伝え」
「あ、うん」
白川さんはハイハイとソファに座った。
俺と奏でソファのところのテーブルへ料理を運んでいると、近づく足音がしてリビングのドアが開いた。
現れたのは高遠さん。
両手で持った箱を中に入れてからドアを閉めた。
「聖夜。久しぶりだな」
「おう」
「隆盛先輩に送ってもらったのか?今車ですれ違う時にお互い気づいてな。
少し車停めて話した。あの人は相変わらず過保護だな」
「送らせたんだよ。あの野郎、無茶しやがって。まだ腰いてぇ」
な、なんか想像が膨らむ発言だな…。
「あまり酒飲むなよ。俺が怒られる」
「へいへい」
高遠さんは、安心したように笑って料理を見た。
「お、うまそう」
「篤も手伝ってくれた」
「そうか。どうりで見たことないメニューだと思った」
「なぁ、葵は?」
ソファに座る白川さんが高遠さんに聞いてる。
「さっき電話あって、もうすぐ来るって」
高遠さんじゃなく、奏が答えた。さっきの電話は社長だったみたいだ。
「ケーキいるか?って聞いてきたから、いるっつっといた」
「マジっ」
にっこにこと白川さんが喜んでいる。
ケーキ好きなのかな?
なんかかわいい人だな。
高遠さんが持っていた箱には、ワインが3本、シャンパンが2本入っていた。
奏が棚から焼酎と日本酒を出してきて、俺はワイングラスを人数分出し、テーブルに並べていく。
するとドタドタドタっという足音と共に、勢い良くドアが開いた。
「あーおーい。ドアが壊れ…」
「せーいやぁぁぁっ!」
奏が言い終わる前に、社長ががばりと白川さんに抱き着いた。
「あーもーっ相変わらず美人っ!可愛いっ!
そのサラサラ銀髪も、翡翠色の瞳も、白い肌も、桜色の唇も、細い腰も、全部いいっ!
もー、ちゅーしてや…」
「隆盛呼ぶぞ。」
「ハイっスミマセン!」
抱き着いて、意味わからんことを叫んで、白川さんの一言で即座に離れた社長。
…一体何なんだ。
そんな二人を奏と高遠さんは完全スルー。
二人で黙々とお酒を並べていた。
「早く酒とケーキ持ってこい」
「持ってきたらちゅーしてくれる?」
携帯を取り出す白川さん。
「あ、隆盛?」
「すぐ取ってきまーす!」
ため息をつき、携帯をテーブルに置いた白川さん。
…だから、一体、なんなんだ。
俺の視線に気づいた白川さんが苦笑いでこっちを見た。
「葵は気にすんな。バカなだけだ」
その言葉には、なぜか頷く俺。
ごめんなさい、社長。
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