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恋人の存在 2
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「三年振り…だな」
艶やかな笑顔を浮かべ、俺の横…奏の前に立つ梁瀬さん。
「…うん」
「日野くんとは、知り合いか?」
梁瀬さんがチラリと俺を見る。
「葵の、事務所だから」
「あぁ、そうか。一色くんも、久しぶりだね」
「…えぇ。お久しぶりです」
社長は曖昧な笑顔を浮かべた。
「奏。話があるんだが…」
「俺は、ない」
奏は俯いたまま、顔を上げない。
「奏。話だけでも聞いてくれ」
「嫌だ」
二人を取り巻くオーラが、ただ仲の良い友達、ではないことに気づいていた。
俺はそんな二人を見ていたくなくて、その場を離れる。
「…ちょっと、監督の所に行ってきます。
…じゃあ、ね…奏…さん」
ただ、なんとなく。
呼び捨てにするのをやめた。
そのあと、どうなったかは知らない。
いつの間にか奏と社長は帰っていたし、梁瀬さんは普段通り演技をこなしていた。
俺はついて行くのに、必死だった。
そのことが、まだまだ俺は力不足だと感じ、悔しい思いが募る。
きっと、梁瀬さんは、奏と深い関係にあったんだろう。
そう考えるだけで、嫉妬の感情が沸き上がるのを感じた。
昼過ぎに屋外撮影が終わり、みんなはスタジオ移動。
俺は別の仕事が入っていたので今日は撮影終了だ。
俺は自分の車の後部座席へ乗り込んだ。
仕事先から仕事先の移動は橋本さんが車を運転してくれている。
次の仕事は雑誌のインタビューと、その雑誌の表紙撮影。
内容は、映画について。
「着いたぞ」
「あざっす」
先に車を降り、スタジオの中へと入る。
橋本さんは車を停めに行ってくれた。
「あ、おはようございます!」
「おっす。来たか、篤」
今日俺を撮ってくれるのは水瀬さんだ。
メイクルームに入り、服を着替え髪をいじられる。
「¨ATSUSHI¨さん入ります」
俺はカメラの前に立つ。
「んじゃ、サクッと撮りますか」
水瀬さんが微笑んだ。
カシャッ、カシャッとシャッター音が響くなか、俺は自由にポーズをとっていく。
こうして、ああして、とポーズを要求してくるカメラマンもいるが、水瀬さんは一切言わない。
そのかわり、撮影中は会話が飛ぶ。
「どーよ、映画は」
「んー、まぁ…順調です」
「なんだ、歯切れわりぃな」
「いや、まだまだ未熟だなって思って」
「そりゃ仕方ねーだろ。役者としては新人なんだからよ」
「ま、そうなんですけどね」
俺は梁瀬さんを見た奏の顔を思い浮かべる。
目を見開いて、すっごく驚いてた。
そして、拒絶してた。
その拒絶の仕方が、態度が、雰囲気が二人の仲が深いものだと思わせた。
ツキン──胸が、痛む。
「お、珍しい顔」
水瀬さんの言葉に、ハッとなる。
「悩めるお年頃か?」
ニヤニヤ笑いながらシャッターを切りつづける。
「…ハタチの男に、何言ってんですか」
「ハタチだってまだ立派に青春時代だぞー」
「…青春って!」
水瀬さんのオッサン発言に、思わず笑う。
「ハイ、最後に笑顔いただきー。んじゃ撮影終了!」
「ありがとうございました」
水瀬さんにお礼を言うと、なぜか笑われる。
「ん。お前は偉いな」
ポンポンと頭を撫でられた。
「…なんですか、急に」
「いや、お前ってちゃんと礼言うだろ?」
「え?言いますよね、普通」
「いや?言わねぇモデルなんてたっくさんいるぞ?」
自分を魅せる職業の奴なんて、プライド高い奴ばっかだよ、と笑う。
「えー、でも世に出回る俺って、カメラマンの方の腕のおかげで三割増しになってますもん。
それって感謝ですよね」
と返すと、水瀬さんはブハッと笑った。
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