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デート 1
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「おはようございます!」
今日は朝から雑誌の撮影。
スタジオに入り、近くにいた女性に声をかける。
「おはよ~。アツシくんはいつも元気ねぇ」
「ユミさん、疲れてます?」
「わかる~?昨日衣装でトラブってさぁ。徹夜~」
スタイリストである尾崎由美(オザキユミ)さん。
金髪のベリーショートのが似合う、サバサバしたお姉さんだ。
今日は疲れのためか、元気がない。
「うわ、大変ですね……大丈夫なんですか?」
「だいじょーぶ!さ、仕事仕事っ。今日はよろしくね」
溌剌さが少し戻ったのか、キビキビと動き出すユミさん。
「よろしくお願いしまっす!」
「はい、目線こっち。ん、いいね。
よし、おっけー。衣装チェンジしよう」
「アツシくん、こっち来てー」
「はい!」
今日は秋物特集の撮影だ。
スタジオ撮影なので幾分かはマシだけど、それでも暑い。
夏に秋冬ものを着て屋外撮影は厳しいものがある。
まぁ、プロ根性で顔とか見えるとこに汗はかかないけどね。
冬は冬で、半袖とか着て撮影だから寒さで死にそうになるけど。
「衣装チェンジ出来ました」
「ん。アツシくん、適当に動いて。たまに目線ちょうだい」
「分かりました」
今日のカメラマンは水瀬さんの次ぐらいに馴染みのある人だ。
佐山太一(サヤマタイチ)さん。
40間近には見えないほど若々しい、爽やか系のすっげー男前。
水瀬さんといい、佐山さんといい、モデルしてても全然おかしくない人たちだなー。
「よし、おっけー。撮影終了、お疲れさーん」
「ありがとうございました!」
「ユミー、今日俺早めに帰るからー」
「んー、分かった」
ちなみに、ユミさんと佐山さんは夫婦。
ユミさんは仕事では旧姓を名乗ってるみたい。
撮影も終わり、マネージャーの橋本さんと車に乗り込む。
「篤、今日の撮影、延期らしいんだ。セットが破損したみたいでね。
詳しいスケジュールは届き次第連絡先する」
「そうなの?え、じゃあ今日この後は?」
「何もないから、休み」
「はーい」
一度事務所に戻り、橋本さんと軽くスケジュールを確認した後、事務所を後にする。
「奏いるかな~」
突然の休みに鼻歌を歌いながら家に帰る。
鍵を開けて中に入り、リビングに入ると……ソファでうたた寝をする奏がいた。
「奏?」
呼びかけに身じろぎもせず、スヤスヤ眠る奏に笑みがこぼれる。
そっと髪に触れた。
柔らかく、サラサラと髪が指を通り抜けていく。
そのまま頭を撫でていると、俺の手にすり寄ってくる奏。
か、かわい………。
起きないことをいいことに、しばらく撫で続けた。
「……ん、」
「あ、奏起きた?」
俺が帰ってきてから一時間半。
奏のまぶたが上がる。
「……ん?あつし……?あれ、仕事は……?撮影……」
「急遽撮影延期。だから休みになったんだ」
「そか」
起き上がりん~っと伸びをする奏。
なんか猫みたいだ。
「あ、篤。頼みあんだけど……」
「ん?なに?」
「……いや、やっぱいいわ。せっかくの休みだし」
「気になるじゃん。なに?」
奏は少し迷いながら、俺をチラッと見た。
「本屋……連れてってくんね?」
「なんだ、そんなこと?いーよ」
言い渋るからどんな事かと思ったら。
せっかくの休みだからゆっくり休んだほうがいいって思ったみたい。
「何買うの?」
「んー、この前読んだ続編出たから、それ。あとは欲しいのあったら適当に買う」
二人で本屋をぐるぐる回る。
奏はジャンル問わず、何でも読む。
手にしていく本は統一性がなく、本当に適当漁ってるみたいだ。
結局また奏は五万近く使い、本を購入。
車に乗り込みた時間を確認すると、午後4時過ぎだった。
「ね、奏。急いで家帰んなきゃなんない?」
「いや?別に」
「じゃあぶらぶらドライブしよーよ」
「いいぞー」
「やった。デートだね!」
「なーに言ってんだよ。ほら、運転しやがれ」
軽く流されてしまった……。
一時間ほど適当に車を走らせて、着いた先は。
「海」
「海だねー」
「ベタなドライブコースだな」
「まぁまぁ。降りようよ、奏」
俺たちは車から降りて、眼下に広がる海を眺める。
「つか、あちーよ」
奏はパタパタとシャツをはためかせながら、下を覗いた。
今いる駐車場から下に行くと、砂浜が広がっている。
「夕方でもけっこう人いるな」
「シーズンだしねー」
砂浜にはまだ多くのパラソルが立ち、人が寝そべっていた。
「奏も海水浴とか行く方?」
「高校、大学はけっこう行ったな。肇とか葵とか聖夜とか学校の奴らと」
「へぇ~どこの海?」
「伊豆。隆盛先輩んちの別荘あるから。プライベートビーチまであったし」
「なにそれ、セレブ!」
俺が叫ぶとハハッと奏が笑う。
「学園はそんな奴らばっかだったからな。篤の反応は新鮮」
「あぁ、金持ち校だもんね……」
俺は一般家庭育ちです。
「俺もどっちかってゆーと普通に暮らしてたからさ。
周りの金持ちっぷりに引く部分あったなー。聖夜も引いてた。
あいつ、しょっちゅう一般家庭の俺にはついていけんなんて呟いてた」
「あれ?そうなの?」
あの学園に通う人って裕福なとことか、奏みたく芸能関係なとことかじゃないの?
そう質問すると、まぁ基本はそうだけどな、と返ってきた。
「聖夜は超難関試験を突破した特待生だから。
あいつちょー頭いーの。マジびびる。三年間、ずっと学年主席だったしな」
しかも、満点で!
なんてケラケラ笑う奏。
え。ま、まま満点って。そんなこと可能なんですか。聖夜さん何者ですか。
すげー…人間業じゃない…。
口を開けて呆けている俺を見て、奏はクスリと笑った。
「もう行こうぜ。暑さ限界」
「へ?あ、うん」
車に乗って、来た道を戻る。
夜の七時も過ぎ、時間も時間なので外で食べて帰ることにした俺たち。
「ね、奏。焼き肉行こうよ。美味しいトコ知ってんだー」
「肉っ!いいぞー」
にっこにこの奏。
聖夜さんが言ってた。奏連れてくなら焼き肉行っとけ、喜ぶぞーって。
パーキングに車を停めて、街中を歩く。
居酒屋、フレンチ、イタリアン、バー、いろんな店が建ち並ぶ中、路地に入り、進んでいく。
超高級!って店じゃなく、いたって普通の外観の焼肉店に奏を案内した。
「こんなとこにこんな店あったんだな」
「少し中央通りから外れてるから、あんまり知られてないんだ。
美味しいんだよ、ここ。モデル仲間とかとよく来るんだけどさ」
中に入ると、顔馴染みのおばちゃんが迎えてくれた。
少しぽっちゃりとした、表情がくるくる変わる、かわいらしい感じの人だ。
「あらあっちゃんいらっしゃい。今日はえらくべっぴんさん連れて」
「でしょー?おばちゃん、奥の座敷空いてる?」
「空いてるわよ。二名様ご案内しまーす」
奥の座敷に案内され、座る。
「とりあえず、いつもの盛り合わせちょーだい。
あとビールひとつと、ウーロン茶ひとつ」
「ビールふたつで」
「奏?」
「代行頼めばいいだろ。篤も飲め」
「そうよね~、ひとりで飲むのはさみしいわよね?じゃあ、ふたつね」
おばちゃんが注文を通しに厨房へ行くのを見届けたあと、奏がふっと笑った。
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