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嘘と真実 1
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「よろしくお願いします!」
「はいよ、よろしく~」
とうとう、この日がやってきた。
―risky―リスキーの撮影日。
昨日の打ち上げでお酒も飲まずに早めに帰宅したのは、この撮影のため。
撮影をしてくれるカメラマンは、水瀬さん。
水瀬さんは、五年前からずっとリスキーの専属カメラマンをしている。
「よーし。まずはそこに立って」
そう言われて、水色のスクリーンの前に立つ。
「適当に動いて、たまに目線ちょうだい。いつもの撮影みたく」
「はい」
俺はいつものようにポーズを取っていく。
カシャっと、カシャっと、シャッター音が響いた。
10分ぐらい経ったかな、ずっとその状態が続く。
いつも話しながら撮影をする水瀬さんは、今日はずっと黙ったままシャッターを切っていた。
「よし、おっけ」
カメラを降ろした水瀬さんは、俺に向かって手招きをした。
そばに行くと、ニヤリと笑う。
「なに悩んでんだよ、青少年」
…やっぱりカメラマンという業種は、あなどれない…と、そう思った。
ニヤリと笑いながらこっちを見る水瀬さんに、曖昧に笑う。
「仕事絡みじゃあなさそうだな。恋か?ん?」
「……楽しそうですね」
「んー、楽しい。だって篤のそんな顔、初めて見るしな」
「……そんな顔に、出てますか…?」
俺の中では、抑えてるつもりなんだけど……。
「まぁ、顔っつったけど…雰囲気?オーラ?が、違う」
水瀬さんの言葉に、俺は不安になる。
「……まずい、ですか…?その、撮影……」
すると水瀬さんはあっけらかんと言った。
「べつに?篤の今の雰囲気に合った写真撮るだけだし。
さっき撮りながら、どう撮るかだいたい決まったしな~」
さっきって、アレか?
「さっきの撮影って、どんな意味が……?」
カメラテストかなとは思ってたけど。
「ん?
あれはモデルの現在の雰囲気とか感情掴んで、一番魅力ある部分を切り出すためー」
どんな写真撮るかは、一任されてっからさ、俺。
そう言った水瀬さん。
それは、水瀬さんの腕を完全に信用してるってことなんだろう。
……改めて、すげー人なんだなぁと感じる。
あ、だからこの撮影、リスキーの人が来てないんだ。
「んじゃ、本番いきますかー。上のシャツ脱いで」
「はい」
白シャツを脱いで椅子にかけ、ジーパンだけになる。
「お。お前、体つき変わってきたな」
「そうですか?」
自分の体を見下ろす。
んー…自分ではよく分かんない。
「筋トレしてんのか?」
「まぁ、たまにですけど」
「前までは少年って感じの柔さがあったけど、ぐっと男らしくなりやがって」
「……そうですかね」
「おう。……うん。いい感じに撮れそうだ。
おい、篤」
「はい?」
水瀬さんを見ると、水瀬さんはニッと笑った。
「好きなやつ、いんだろ?しかも今、はがゆい思いをしてるとみた」
水瀬さんの言葉にギクリとする。
ホント、この人、すげー。
「その感情、表出してけ。好きなやつ、思い出せ。
プラスの感情もマイナスの感情も、全部、さらけ出せ」
「え?」
「きっと、いい”絵”になる」
そう言って、水瀬さんは自信たっぷりの笑顔を浮かべた。
カシャッ
カシャッ
シャッター音が響いていく。
俺はスクリーンの前に立って、カメラのレンズを見つめた。
レンズの向こう側に、奏を浮かべる。
サラサラと流れる髪、左右違う惹き込まれる瞳。
ころころと変わる表情、笑った顔はとても可愛くて…いつも俺はドキドキした。
社長や高遠さん…梁瀬さんに嫉妬して、その度に、俺はこんなにも奏が好きなんだと気づかされる。
奏、奏、奏。
…好きだよ、奏。
「よっし、オッケー!いい絵、撮れたぞ」
満足そうに笑った水瀬さんが、終了!と元気に言った。
「ありがとうございました」
「おう。それにしても…お前、マジで惚れてんだな」
水瀬さんの言葉に、俺は笑う。
「ハイ。俺、こんなに人を好きになったの、初めてです」
「本気の恋かぁ。羨ましいね、まったく」
機材を片付けながら、しみじみとつぶやく水瀬さん。
「水瀬さんは、恋人とかいないんですか?」
「んー?今はいねーなぁ。ま、俺も片思い中なんだけどさ」
え!
普段聞くことのない水瀬さんの恋愛話に興味が惹かれた。
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