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嘘と真実 2
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「ほんとお前は正直だな。興味津々って顔」
「…すいません」
いやだって、水瀬さんが片思いって…こんないい男!
ははって誤魔化すように苦笑いしていると、テーブルの上に置いてあった水瀬さんの携帯が震えた。
「っと、わりーな」
俺に断りを入れて電話に出た水瀬さん。
「もしもーし?今?大丈夫。ん?そうか、わかった。んじゃ出るわ」
電話を切った水瀬さんは椅子の上に置いてあった紙袋を手にすると、俺を見てニッと笑った。
「篤。見るか?俺の片思いの相手」
見ます!、と勢い良く首を縦に振った。
「すっげー美人なんだよなぁ」
スタジオから出て、エレベーターで下のボタンを押しながら水瀬さんはそう言った。
水瀬さんのノロケ具合に期待度アップ。うわー、めちゃくちゃ気になる。
エレベーターを降りて、屋外に出た。
どんな人なんだろう。
わくわくしながら、水瀬さんの少し後ろを歩く。
水瀬さんは目的の人を見つけたのか、手を上げた。
「聖夜!」
ん?セイヤ?
同んなじだー、なんて銀髪美人さんを思い浮かべながら、俺は前を覗き込むように顔を出した。
そして、目に映った人物に、ポカンとなる。
「さんきゅ、和馬さん…って、篤?」
頭に思い浮かんだ顔と同じ顔をした人物も、俺を見て驚いた顔をしてる。
え、え?!聖夜さん??
そこには、コンパクトな形をした外車の側に立つ、ダークグレーのスーツを着た聖夜さんがいた。
「なんだ?知ってんのか?」
「あぁ。…奏と肇で飲んでるときに、葵が連れてきたから。な?篤」
え?
えっと…そうか、"KANADE"との繋がりじゃなくて、社長とじゃないと、変だよな。
「あ、はい」
「へぇ。相変わらず仲いいな、お前ら。ほら、コレ」
「ありがと」
「お礼にちゅーでも…」
「ホント、葵とそっくりでウザイ」
「冷てーなぁ」
ハハハって水瀬さんは笑ってる。
って、え、じゃあ、片思いって、聖夜さん…?
えぇぇっ!
固まっている俺を、不思議そうに見上げてきた聖夜さん。
「どうした?」
そんな俺を見て、苦笑いの水瀬さんはぽりぽりと頬を掻いた。
「あー、片思いの相手っつったから」
「は?誰の」
「俺の」
「誰が?」
「聖夜」
「……はぁ」
聖夜さんは、盛大にため息をついた。
「まだ、んなこと言ってんの…」
「当たり前だ!俺は諦めねーぞ!」
「何度も言ってるだろ!嫌だって!」
「俺だって何度も言ってるはずだ!お前以外にいねーんだよ!」
ちょ、ちょっと、あの…え?修羅場?
二人を前に、俺が慌ててしまう。
「あのなぁ…いい加減諦めろ!俺の意思は、変わらねぇ」
「諦められるか!」
そう叫んだ水瀬さんは、ガッと聖夜さんの両肩を掴んだ。
「俺の理想!
流れる銀髪、ガラス玉みたいな翡翠色の瞳!白い肌に、細い腰!
俺の何かをかき立てるんだよ、お前は!」
…ん?どこかで聞いたことのあるセリフだぞ?
「…マジで似すぎてて、怖いよ、アンタら…」
離せ、と聖夜さんが身をよじると、水瀬さんは手を離した。
「葵とは好物が似てるからなぁ。男の趣味は違うけど」
そうそう!社長が同じようなこと聖夜さんに…ん?男の趣味?
「って葵はどーでもいい!
な?聖夜。こんだけ愛してんだ、俺に堕ちてこい。真剣なんだよ」
っていうか水瀬さん、熱烈すぎ!
うわ、なんかかっこいい…。
なんて思っていたら、水瀬さんの次の言葉に、俺はポカンとした。
「マジで綺麗に撮ってやるから!モデルになれ!」
………は?
モデル??
聖夜さんは頭をかき上げ、男らしく、一言。
「無・理!」
水瀬さん、撃沈…。って!
「片思いって…恋愛の意味、じゃなくて…?」
「は?…あぁ、ナイナイ」
聖夜さんはきっぱり言い切った。
「和馬さん、説明」
聖夜さんにそう言われ、うなだれていた水瀬さんは顔を上げて、俺を見る。
「いや、まぁ片思いっつっても、被写体として…な。
あ、別に恋人でもいいんだぞ?聖夜ならいつでもウエルカム!」
「軽いよ、和馬さん」
呆れたようにため息をつく聖夜さん。
それに対して水瀬さんはハハっと笑った。
「ま、聖夜に熱烈ラブコールをしてんだけど、毎回振られるんだよなぁ」
「何年も…しつこすぎ」
「…何年もって、そんな前からなんですか?」
俺の問いに、二人は声を揃えて答えてくれた。
「「15年」」
「は?」
「俺が高校一年のときから」
うんざり顔の聖夜さん。
「良い被写体のためなら!」
聖夜さんとは対照的に、いきいきとした水瀬さん。
なんか…すごい関係だ。
少し呆気にとられていると、聖夜さんが何かを思い出したように、俺の顔を見た。
「そうだ、篤。本渡していいか?奏に返しといて欲しいんだよ」
聖夜さんは、ちょっと待ってなー、と側に停めてあった車の助手席から紙袋を取り出した。
奏…に…ですか。
「これ」
差し出された紙袋を見つめて、俺は曖昧に笑ってから聖夜さんを見た。
「あの、俺…奏の家、出たんですよ…」
「は?…なんで」
不思議そうな顔をした聖夜さん。
…もしかして、知らないのかな…
俺はチラリと水瀬さんを見る。
ここで言うのは……まずいよな……?
俺の視線を感じ取った聖夜さんが、水瀬さんに声をかけた。
「和馬さん。篤、もう撮影終わり?」
「ん?あぁ、終わりだけど…、なに、込み入った話か?」
「まぁ…篤、この後仕事は?」
「今日はこの撮影だけで、もうないです」
「そうか。とりあえず荷物取ってこい。話はあとでな」
「分かりました」
俺は水瀬さんとともにスタジオに戻って荷物を持ち、水瀬さんに挨拶をして、スタジオから出る。
扉が閉まる前水瀬さんは、青春だねー、なんて言ってた。
…なんか感づいてるかも、あの反応は。
聖夜さんのところに戻ると、聖夜さんは再び話を切り出してきた。
「で、だ。なんで出てった?」
「レコーディングも無事終わったのと……その、恋人が出来たから、出てってほしいって…」
「はぁっ?……恋人って誰。篤知ってんのか?」
「あの…梁瀬さんだって…」
すると聖夜さんは深く眉間にシワを寄せて、なんで…とつぶやいた。
「…篤、奏の家行くぞ」
「え?」
「奏に直接聞く」
あのバカ、何考えてんだ。
そう悪態をついた聖夜さんは、車に乗り込んだ。
「ほら、車取ってこい」
「あ、はい!」
地下の駐車場に、急ぎ足で向かった。
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