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嘘と真実 3
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「電話して家にいろって言ってあるからいるはずだ。
篤は十分ぐらいしてから入ってこい」
けど、リビングには入ってくんなよ。
ドアの側にいとけ。
そう言って、先に聖夜さんは家の中に入っていった。
腕時計を眺めながら、俺は少し緊張している自分に気づく。
うわ、会うの…約一ヶ月ぶり?
短くも長くも感じられた十分が過ぎ、俺は静かに家の中に入る。
そしてリビングのドアまで行くと、5センチぐらいドアが開いていて、中の声が聞こえてきた。
聖夜さん、聞こえやすいようにわざと開けてったんだろうな。
「お前…俺に言ってないことあんだろ」
「…なんのことだ?」
「しらばっくれんのか?…篤はどうした?何で出ていかした」
俺の名前が挙がったことに、ドキッとなる。
「…会ったのか?篤に…」
「偶然な」
「なら、聞いたんだろ?その通りだよ」
「はぁ?お前、馬鹿か!
嫌だ嫌だっつって愚痴ばっか言ってたじゃねーか!
何でそんな奴と寄りが戻るんだっつの!」
「うるせーなぁ。聖夜には関係ないだろーが!」
「あぁ?あんだけ相談しといて関係ねぇだぁ?」
喧嘩腰の二人に、ハラハラする。
え、ちょ…どうしよう。
ってか、俺どのタイミングで入ればいいわけ?
「…気持ちは、変わるんだよ」
「本心か?」
「…あぁ」
「…嘘つくなよ!そんな顔して、何言って…」
「いいんだよ!これで、いいんだ…っ」
話し声しか、聞こえない。
だけど、どこか奏の声が辛そうに聞こえるのは、気のせいなの…?
ねぇ、奏。
どうしたんだよ…。
「奏…お前何があった。
あんなに、喜んでたじゃねぇか。それなのに…」
「いいっつってんだろ!そんな話しにきたのか?なら、もう帰れよ」
「なに頑なになってんだよ!何隠してやがるっ。
お前がなんか隠してることぐれー、わかってんだよ!何年つるんでると思ってんだ!」
「……っ、うるさい…」
「いいのか?なぁ、いいのかよ、このままで。
嬉しそうに、俺に報告してたじゃねーかよ。
あんな楽しそうな奏、俺は初めて見た。そんなお前を見て、心から応援してやりたくなった。
後悔しねーのか?本当にこのままで、お前はっ――、」
「言うな!!…それ以上、言うな…」
聖夜さんの言葉をさえぎって、奏が叫んだ。
「頼むから…もう言うな…っ。
諦めようと、してんだよ…忘れようとしてんだよ…っ。
思い出させたり、すんな…っ!」
「奏、お前…」
声が、震えてる。
奏…?
泣いてるの…?
「しょーがねぇじゃんっ!大事なんだよ!…アイツが、大事なんだ…」
「…お前、あの野郎に何言われた」
「…べつに、」
「まだしらばっくれんのか!…まさか、脅されたのか?」
…脅された?
…誰に?…何を…?
「…そうなんだな」
聖夜さんの問いかけに、奏は答えない。
「…奏」
「…………あぁ」
しばらくして頷いた奏に、聖夜さんは深くため息を吐いた。
「おっまえ、馬鹿か!んなことで、お前が犠牲になってどーすんだよ!」
「うるさい!
アイツ…篤は、めちゃめちゃ喜んでたんだよ…。リスキーのモデル、抜擢されて…」
…俺…?
「これからだって、もっともっと、活躍してく…。
…潰したくないんだよ、篤の未来を!梁瀬なんかのせいで!」
「篤の仕事に圧力かけるぞって言われたわけか…あの野郎…っ!」
え…?圧力…?
…脅されてって、俺のことで…?
…じゃあ、さっき諦めようって…忘れようって…、大事なんだって…全部、全部――俺のこと…?
ねぇ、奏…それって――
ぐるぐると、頭を駆け巡る感情。
まだ頭と心の整理がつかない俺に、聖夜さんの言葉が届く。
「だとよ。入ってこい」
その言葉に俺はそっとドアを開け、中に入った。
目に入ったのは、こっちに背を向けてソファに座る奏。
そしてゆっくりと振り向く。
両方の目にいっぱい涙を溜めた、奏の顔。
その目が驚きに見開かれ、その拍子にポロっと涙がこぼれた。
「あ、あつ、し…え…?なん、で…」
戸惑う奏。
俺は奏のそばまで近づいて、指先で奏の涙を拭った。
「俺が連れてきた。後は二人で話せ」
ソファから立ち上がり、俺の横を通る際にポンっと肩を叩いた聖夜さん。
「え?は?おい、聖夜…っ」
「ありがとうございます、聖夜さん」
「じゃぁなー」
ひらひらと手を振って、聖夜さんはリビングから出て行った。
奏を見下ろすと、気まずそうにうつむいている。
俺は回りこんで、奏の横に座った。
「奏」
俺の声にピクリと体を震わせる。
「奏。俺のことで脅されてたなんて知らなくて…ごめんね」
「…なんでお前が謝るんだよ」
うつむいたままの奏。
「だって…奏に嫌な思いさせちゃったでしょ?」
奏はふるふると首を横に振った。
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