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嘘と真実 4
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うつむいたまま動かない奏。
その小さな肩を見つめながら、自分は今何を話せばいいのかを考える。
聞きたいことは、いっぱい。
なんで、急に目を合わさなくなったの?
どうして、謝ったの?
許してって、なにを?
キスの意味は?
――さっきの、言葉の意味は?
だけど。
それよりも、そんなことよりも。
伝えなきゃ。
今、言わなきゃ。
何よりも奏に知ってほしいことは。
「奏…顔、上げて」
俺の言葉に、少し間を開けてから…ゆっくりと顔を上げた奏。
少し目が赤くなってる。
「奏に、聞いてほしいこと…あるんだ」
俺は奏の両手をきゅっと握った。
そして奏の目を、真っ直ぐ見る。
「俺…奏が好きだよ」
俺の言葉に、奏は戸惑うような表情を見せた。
「あ、あの…えっと…友達として…だよな…?」
「違う」
俺は首を横に振る。
「高遠さんが奏に触れてるのを目にして、すごく嫌だった。
社長にも…梁瀬さんにも、嫉妬した」
奏の手を、強く握った。その手からも、伝わるように。
「奏の笑顔にいつもドキドキした。…奏に、触りたいと思った。
たぶん、俺…初めて会ったときから惹かれてた。
友達じゃ、嫌だよ。そんなんじゃ足りない。
俺は…奏が、本気で好きだよ」
言えた、やっと。
「う、そ…」
「ホントだよ」
「……っ、お前、ノーマルじゃ…っ」
「うーん…どうなんだろう。
本当に奏に惚れちゃったから、よくわかんないね」
奏の目に、どんどん涙が溜まっていく。
「ねぇ、奏。教えて。さっきの言葉の意味。
諦めるって?忘れるって?…俺が大事って…ねぇ、奏。
俺…うぬぼれてもいいの…?…わっ、」
すると奏は、勢いよく俺に抱きついてきた。
ぎゅううっとすがるように首に腕を回してくる奏。
「…嘘じゃ、ない…?
ホントに好きって、恋愛の意味で…?」
俺は小さく震える奏が可愛くて、愛しくて。
その体をキュッと抱きしめて耳元で囁いた。
「うん。恋愛の意味で。
奏が、大好きだよ」
すると、奏は俺の肩に顔を埋め、ほんとに小さな声で…言ってくれたんだ。
「…俺も、好き…」
あぁ。
天にも昇る気持ちって。
こーゆうことを言うのかもいれない。
俺は、奏の小さな小さな体を…力いっぱい抱きしめた。
夢みたいだ。
奏が、俺の腕の中にいるなんて。
しばらくそのまま抱き合っていた俺たち。
腕の中の奏がもぞもぞと動いたので、俺は少し体を離した。
「奏?」
俺の呼びかけに、奏はうかがうように俺を見てきた。
…上目使い…かわいい…
「あの…その…篤…」
「ん?」
「…もっかい、言って…」
躊躇うように言ったのは、そんな可愛いセリフで。
俺はすぐにリクエストに答える。
「好き。奏、大好き」
すると奏は、頬を染めながら、はにかむように笑った。
「ありがと。…俺も、好きだよ」
あーもー。
可愛すぎ!
俺はまたぎゅうううっと奏を抱きしめた。
この腕の中に納まる奏もっと堪能したいけど、その前にハッキリ聞いとかなきゃ。
「ねぇ、奏。脅されてって、あの人に何を言われたの?」
抱きしめたまま、問いかける。
奏の体が、ピクリとした。
「教えて。俺のことなんでしょ?」
教えて、と再度強く言うと、しばらく動かなかった奏は、はぁ、と息を漏らし体から力を抜いて、顔を上げた。
「お前の…篤の仕事、奪うって。圧力かけて、仕事なくしてやるって。
…やめてほしけりゃ、恋人になれって…」
それからポツリポツリ…と梁瀬さんとの出来事を話してくれた。
街で、梁瀬さんと遭遇した。
すぐに無視をしようとした奏は、俺の名前が出たことに、足を止めたらしい。
そして、奏に脅しをかけた。
「お前と目合わせらんなくて…なるべく会わないようにしてた。
無視、してるみたいで、嫌だった…」
そうだったんだ…。
「だから、俺に謝って、許してって言ったの…?」
「なっ、え…?おっおま…、起きて…っ」
慌てる奏に、俺はうん…と頷く。
「…じゃ、その後のことも…」
「…俺、キスされて、舞い上がったし」
そのあと落とされたけど…さ。
奏はうーーと唸っている。
「アレは、その…我慢できなかったってゆーか…悪い…」
「なんで謝んの。嬉しかったから、いいんだ」
ね?と奏の唇に軽くちゅっとキスをした。
「…っ!」
なんでいちいち可愛い反応するかな、この人は。ほんとに30歳?まぁ見た目は俺より下って言っても通るけど。
「ねぇ、奏。こんなこと言うの、変だけどさ…梁瀬さんと、別れて。
俺…やだよ。脅されて、俺のためとはいえ…奏があの人のものなんて」
俺は奏に笑いかける。
「守ろうとしてくれて、ありがとう。
でも、信じて。どんな圧力にも、負けないから。仕事奪われても、奪い返すから。
どんな逆境にだって…勝ってみせるから。
だから…あの人のとこなんかにいかないで。そばで、見ててよ」
奏がそばにいてくれるなら、俺、頑張れるから。
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